宮廻館　広谷南城　中世城館　城跡　城址　埼玉　武蔵

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	宮廻館（広谷南城か）
関連ページのリンク	200/01/08の日記　　広谷宮前城　広谷北城　大堀山城　大穴城　下広谷の遺構① 　下広谷の遺構②
所在地	埼玉県川越市下広谷字宮廻７９２、７９３付近
歴史と沿革	■ 平成１１年に行われた（財）埼玉県埋蔵文化財事業団の発掘調査によれば館は３度にわたって拡張されており、出土した遺物からは14から15世紀の館跡と推定されている。梅沢氏の下記の著書によれば「埼玉の古城址」（中田正光著）の広谷南城、関口和也氏の「字宮廻り所在の遺構」に相当するということである。 ■「新編武蔵風土記稿」の下広谷村の記述では「古跡三ヶ所　土人城の跡と唱て何人の居跡なることを伝えず」とあり、「一は村の中ほどにあり．．．」という部分に該当しそう感じもするが、堀の規模が合わないことと、この記述を大堀山とする考え方もあるようである。築城者、在地領主などは大堀山と同様に不明であるが、その起源は年代的に両上杉氏の争乱である長享年中の大乱の時期に相当する陣城のようである。 ■この点について、「宮廻館跡　第２次発掘調査報告書」では次のような理由を示し宮廻館を含む大堀山の館群が15世紀末から16世紀中ごろの間に上杉氏の「勝陣所」として使用されていたとする歴史的経緯を推定している。 ⑴　「大田道灌状」の文明９年(1477年)　⑵「扇谷上杉定正状」の長享２年(1488年)の記述から「勝陣所」が扇谷上杉氏の陣所であった。 ⑶　文亀２年(1502年)「宗祇終焉記」の記述で上戸の陣所が山内方であった。 ⑷　永禄２年(1559年)の「小田原衆所領役帳」では後北条氏の小田原衆御宿隼人佑26貫532文の知行とされ周辺の地域も松田氏の知行地となっている。　以上のことから、当初両上杉氏による武蔵の領有権争いから、扇谷上杉氏の拠点として築城された。その後太田道灌の死去により16世紀前後に山内上杉氏の支配に変わった。さらに天文15年(1546年)の後北条氏との戦いの結果後北条氏の支配するところとなりやがて館としての役割を終えたという。　ただしこの点に関して、「坂戸市史」では「勝陣所」に関する「扇谷上杉定正状」の記述について、坂戸市内の石井、塚越地内の寺社が利用されたのではないかと推論している。
確認できる遺構	土塁、空掘
構造的特徴および周辺の地理的特徴	■坂戸台地の北東部分にあり南の大谷川に向かってやや緩く傾斜した斜面に所在している。また上記の発掘調査により5ヶ所ほどの方形の郭の集合体であることが判明している。大堀山の南西約800メートル、広谷北城の南南西約600メートルの地点に位置している。
参考資料、古文書、記録	「坂戸市史」(1992年坂戸市教育委員会編集/坂戸市発行) 「中世北武蔵の城」（梅沢太久夫　著　2003/岩田書院刊）「川越市史　中世編」（1985年/川越市編集発行）「埼玉県史　通史編２中世」（1988年/埼玉県編集発行）「川越の歴史散歩　霞ヶ関・名細編」（新井　博　著　1982年/川越郷土史刊行会）「宮廻館跡　第２次発掘調査報告書」(2002年/川越市教育委員会ほか)
文化財指定	無
訪城年月日	200/01/08

訪城の記録

（　2005/01/08　）
■切断された土塁の叫び
　いやすごいのなんのって、何がすごいのかというと竹薮が．．．．(^^;　進退窮まるというのはこのことで、多少の藪は気にならないように環境に順応してきたつもりですが、さすがに東側への踏査はできませんでした。今日は風は冷たいものの冬晴れの上天気であるにもかかわらず、竹薮の中は薄暗くびっしりと竹が密生していて人の入りこむ隙間が全く．．．．(^^;
　おまけに遺構の北西側の大半は工業用地と思われる造成工事によって完全に茫漠とした更地となり、土塁が途中で切断された跡が痛々しい様相を呈していました。元々耕作地の拡大により一部喪失していたと聞いてはいましたが、これは正直言ってかなりのショックでした。
　後でいろいろ調べてみると、これもまた圏央道の道路予定地であったのです。こうしてみると大堀山の遺構が残ったのは関係者が国家プロジェクトを相手に相当に努力した結果ではないかと思います。そこでふと気になるのは大堀山の北側の「馬出」部分は、果たして大丈夫なのかということです。道路を挟んで少し離れた所にあるので気になります。
　風が強く、竹林の竹同士が上の方でぶつかり合って甲高い音をたてていました。それは、永久に失われてしまった土の芸術たちの悲しい叫び声に聞こえたような気がしました。そんな重たい気持ちを引きずりつつ午後３時過ぎに帰途へとつきました。

Ｂｅｓｔ　Ｓｈｏｔ？

　写真の左側に高さ１ｍほどの土塁跡が僅かに見えますので、拡大写真の方にはマーキングしてあります。しかし、この林の北側は伐採整地されかつての遺構は影も形も存在していません。
　国家の一大プロジェクトである圏央道の建設は高尾山周辺の環境問題だけではなく、著名ではありませんがこうした中世の文化遺産を確実に破壊していることは紛れも無い事実です。
　たしかに費用は嵩みますが仮に建設するとしても、一部高架方式を採るなどの方法もあるのではないかと。(　2005/01/08　撮影　晴　)

交通アクセス

・川越市立広谷小学校と坂戸市、川越市、鶴ヶ島市にまたがる富士見工業団地の間の民家北側の屋敷林付近。
MapFan Web の案内図です

（　2005/01/　撮影　）

■とにかくすごい竹藪で体が入って行けない状態ですので、デジカメのストロボぐらいの光ではライティングの補整をしてもこんな感じの写真になってしまいます(^^;
　こうしてみると人間の視覚は竹薮越しに土塁だけを取捨選択して視認できるのだから、とてもすばらしい能力といえます。

■郭の境界の空堀と土塁。Ａ-Ｂが東側の郭のものでＣ-Ｄが西側の郭のもの。堀の深さは約1.5ｍ、幅は上部で３間弱程度です。民家の北側の土塁はまだ健在の様子ですが、視認できる所まで体が進みません。
　あとから気がついたのですが、東側から見れば少し分かりそうな気もしますが。

■西側の郭の土塁が東側に小さな折を見せて突出している部分。Ｃ－Ｄの部分ですけど．．．．(^^;

■黄色の線で囲んだ部分が、大雑把に切断された広谷南城の土塁。

■広谷南城の南側から見た西側の部分。林のすぐ裏側は更地となっていて、著しく期待を裏切らせますが。
　なお、東側は南側に民家があり、その裏山となっています。また畑の中にある直線状の段差は明らかに人為的なものではありますが、遺構の一部かどうかは分かりません。


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