123 真実の戦国時代 渡邊 大門 編著/柏書房/2015年刊行/2000円 (2019/11) 「戦国大名論」「戦国大名の諸政策」「戦国大名と戦争」「天皇・将軍と戦国大名」「戦国期の宗教と文化」の5部から構成された一般向けの論考集であり、合計19名からなる研究者の小論からなる。
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122 関ヶ原合戦は「作り話」だったのか−一次史料が語る天下分け目の真実 渡邊 大門 著/PHP研究所/2019年刊行/900円 (2019/11) 後世に編纂/記述された二次史料についてはあくまでも参考に留め、同時代に記された一次史料により従来の司馬遼太郎などにより形成されていた関ヶ原合戦のイメージを払拭するという趣旨で記述されている。些か違和感のある表題でもあるが、もちろんこれは「関ヶ原合戦」自体を作り話であると指摘している訳ではない。
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121 「戦国武士の履歴書−戦功覚書の世界」戎光祥選書ソレイユ006 竹井 英文 著/戎光祥出版/2019年刊行/1800円 (2019/11) 上野國里見郷出身の里見吉政が晩年である寛永5年(1628)に記したとされる「里見吉政戦功覚書」を軸に据え、同人の仕官先、活動など足跡をたどり、その生涯について明らかにした労作である。所謂二次的な性格を有する史料でもあることからその覚え書き自体の記述が全て客観的な史実/事実であるかどうかという疑問も否定できない側面もあるが、そこに記されている歴史的な背景については概ね史実に近いものがあるという。
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120 「国司の館」 田中 広明 著/学生社/2006年刊行/2200円 (2016/5) 官位を表したとされる装身具である腰帯具(革帯の飾り)、国司の日常生活の場としての居館、古代牧の姿を武蔵長堀遺跡の発掘などの考古学的調査研究をベースにして、古代律令制黎明期から9世紀半葉にかけての東国における古代地方官人の姿を描き出すことにより武蔵、下総、常陸などの古代東国の実像に迫り平将門の乱の時代背景へと迫ろうとする意欲作。
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119 「蝦夷と東北戦争」(戦争の日本史3) 鈴木 拓也 著/吉川弘文館/2008年刊行/2500円 (2016/5) 奈良時代から平安時代初期にかけての当時の律令国家が行った「征夷」の政治的背景を論じた著作であり、「 戦争の日本史」のシリーズ第3巻として刊行されたものである。
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118 「戦国武将 敗者の子孫たち」(歴史新書y) 高澤 等 著/洋泉社/2012年刊行/890円 (2015/12) 著名な武田勝頼、真田信繁(別名真田幸村)、明智光秀、石田三成、今川氏真のほか豊臣秀勝、松平信康らの系譜について系図(血脈)などを中心にしてその末裔の消息について記している。
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117 「山名宗全と細川勝元」(読みなおす日本史) 小川 信 著/吉川弘文館/2013年刊行/2200円 (2015/03) 表題のとおりり15世紀中葉に発生した有名な応仁の乱における中心人物となった山名宗全(持豊)とその娘婿である細川勝元が相闘うこととなった経緯について詳述した一般向けの書籍である。山名家および細川家の系譜を辿り、その分国支配や守護代並びに有力国人衆の動向、合力した畠山氏、斯波氏、大内氏などについても詳しく論じ、その後における両家嫡流のの衰亡の行方などについても分かりやすく記されている。
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116 「応仁・文明の乱/」(戦争の日本史9) 石田 晴男 著/吉川弘文館/2008年刊行/2500円 (2015/02) 応仁・文明の乱を中心にして、足利義教、足利義政の治世を東国における鎌倉公方(後の古河公方)の動向も踏まえつつ当時の政治情勢とその前後する争乱について、同時代に記された公家・大寺院の僧侶らの古記録を元にして多面的に記された好著である。
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115 「信長が見た戦国京都−城塞に囲まれた異貌の都」 河内 将芳 著/洋泉社/2010年刊行/860円 (2011/05) 洛中洛外図などの絵画史料、京町衆(惣、町組など)の自治の再評価、信長と日蓮宗の関係などの諸点から戦国期京都の実態を解明した労作である。戦国末期の京の町衆、町筋についての基礎的理解に役立ち、収録されている信長の京都宿所一覧(二条御新造、本能寺などの普請時期を含む)も理解されやすい。
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114 「信長の天下所司代 筆頭吏僚 村井貞勝」 谷口 克広 著/中央公論新社/2009年刊行/760円 (2011/05) 後の京都所司代の先駆けとなった村井長門守貞勝の事績について、「信長公記」を始めとして「言継卿記」「言経卿記」「兼見卿記」など当時の公家日記等から復元した労作である。邸普請では、足利義昭邸、二条御新造、本能寺などの建設、改修等を指揮した旨が明らかにされている。
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113 「義に生きたもう一人の武将 石田三成」 三池 純正 著/講談社/2009年刊行/1300円 (2011/04) 石田三成の肖像画の信憑性にたいする疑問に始まり、抹消された石田三成一族の屋敷跡の謎が意味するもの、三成が関与したとされる蒲生氏郷急死、関白秀次失脚、千利休切腹などについてはこれを冤罪として否定。状来の石田三成像の打破に対する著者の意気込みが窺える個人伝記ではあるが、年貢割合の裁定に関する個所では三成の善政として過大評価のきらいも見受けられる。。
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112 「中世を道から読む」(講談社現代新書新書) 齋藤 慎一 著/講談社/2010年刊行/840円 (2011/03) 中世後期の古文書に見られる「路地不自由」の文言から、中世社会における街道の実態とその交通事情を解きあかした好著。「路地不自由」の含意は物理的な遠さだけではなく、河川の渡河事情やその時の政治情勢に依拠するところが多く、また当時においては橋桁による架橋よりも船橋の設営や浅瀬、渡船による渡河が多かったことを実証している。また峠道の機能とその管理実態にも推論をめぐらし、中世後期における鎌倉街道の衰退と近世の街道へと繋がるとされる後北条氏による新しい街道の整備を明示している。
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111 「百姓から見た戦国大名」(ちくま新書) 黒田 基樹 著/筑摩書房/2006年刊行/7000円 (2011/03) 藤木久志氏らの指摘による戦国期における慢性的な飢饉が横行していたとの説を受け、これに伴う戦国期前の村落相互の争いの激化を調停する存在として領域の一円支配を束ねる戦国大名・国衆が登場してきたとする見解を提示され、従来の天下統一史観や領国間の権力闘争という側面のみに捉われることのない学説の背景と経緯についても平易な文体で紹介をされている。
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110 「戦国常識・非常識大論争!」(歴史新書y) 鈴木 眞哉 著/洋泉社/2011年刊行/860円 (2011/02) 頑迷な歴史学者達が主張する「定説」を真っ向から批判した「戦国軍事史への挑戦」の続編ともいうべき著作であるとともに、長年の同氏の戦国史における諸見解を集大成したものともいえる。
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109 「本能寺の変−信長の油断・光秀の殺意−」(歴史新書y) 藤本正行 著/洋泉社/2010年刊行/860円 (2011/02) 著名な歴史的事件である本能寺の変に関して流布している様々の「陰謀説、黒幕説」に対して否定的な見解を示し、あくまでも明智光秀本人による単独犯行であると結論付けたもので、「信長は謀略で殺されたのか」の続編ともいうべき著書である。
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108 「図説太田道灌」 黒田基樹 著/戎光祥出版/2010年刊行/1800円 (2011/01) 関東は古河公方と足利管領が対抗した享徳の乱、山内上杉氏とお扇谷上杉氏の長享年間の抗争、又その間隙をついて関東西部に叛乱を起こした長尾景春がつづきいち早く戦国時代の幕を開けることとなった。そのさなか道灌は駿河今川家の家督相続を支援するとともに、山内上杉氏家宰職として長尾景春の乱を平定し、上杉家一族による関東の安定支配すすめるべく武蔵、相模、上野、下総の戦場を駆け巡り勇名をはせたが、讒訴のため主家である山内定正によって誅殺された。
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107 「箕輪城と長野氏」(中世武士選書) 近藤 義雄 著/戎光祥出版/2011年刊行/2300円 (2011/01) 昭和60年に上毛新聞社より刊行された同名の著書を一部改定したもので、戦国期の長野氏の事績について記された関する数少ない文献の一つです。
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106 「戦国合戦の舞台裏」−兵士たちの出陣から退陣まで− (歴史新書y) 盛本 昌広 著/洋泉社/2010年刊行/860円 (2010/09) 「軍需物資から見た戦国合戦」につづくもので、「松平家忠日記」「三河物語」「信長公記」などの史料に基づき、戦国合戦の陣触れ、兵役、行軍、渡河、陣取り、陣立て、陣中法度、陣中見舞い、退陣にいたるまでのその行動や規範・慣習など多岐にわたり具体的な実例をあげ著述された好著である。
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105 「鳥羽伏見の戦い」−幕府の命運を決した四日間− (中公新書) 野口 武彦 著/中央公論新社/2010年刊行/860円 (2010/07) 大政奉還により公武合体派を巻きこみ長州戦争敗北による退勢の巻き返しを図った徳川幕府(徳川慶喜)は、薩摩藩の陽動作戦による挑発行為にのせられて薩摩藩邸焼討ちを決行する。慶喜は維新暫定政府の議定に加わるべく大坂より軍勢を整え、薩長等が堅い守りを固める京都への再上京を図る。幕府側は会津、桑名等の譜代藩と幕府歩兵隊等を供先として京都に向かわせるが、僅か4日間の戦闘において薩長側の迎撃に有効な反撃もできないままに大坂城へと退却し滅亡の一途を辿る。
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104 「戦国軍事史への挑戦」 (歴史新書y) 鈴木 眞哉 著/洋泉社/2010年刊行/860円 (2010/07) 現在戦国時代の合戦に関して一般に通説とされているものが、如何に根拠のあいまいな史料・推測にもとずくものであるかについて、筆者の長年の研究成果である戦闘報告書(軍忠状、注文)の統計分析という手法により、浮かび上がらせた意欲作。
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103 「戦国時代は裏から読むと面白い!」 (青春文庫) 小和田 哲男 著/青春出版社/2007年刊行/552円 (2010/06) 戦国時代の始まりと終り、敗者側からみた戦国大名の興亡などを軸に記されているが、文庫版という制約などから30以上もの項目について記されているため、全体として大まかな内容に過ぎるという印象が残ります。とりたてて目を見張るような新説が記されている訳でもなく、可もなく不可もなく通勤電車の車内で読むには恰好の一冊。
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102 新版「雑兵物語」 かも よしひさ 著/パロル社/2006年刊行/1400円 (2010/06) 「雑兵物語」は江戸時代における戦陣訓のひとつとして流行したことにより当該伝本・写本の類が極めて多いとされるが、通説では編著者として松平信綱の第五子高崎城主松平信興が有力視され、明暦3年(1657)から天和3年(1683)の間の成立とされている。足軽、鑓担ぎ、馬取り、夫丸、若党に代表される士分未満の雑兵の戦場における兵器取扱い、心得を当時の関東地方の方言を用いて平易、簡潔に記述している。
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101 「戦国史の怪しい人たち」 (平凡社新書) 鈴木 眞哉 著/平凡社/2008年刊行/760円 (2010/06) 戦国時代を中心に輩出された数多くの著名人等に関する出自、高名譚の怪しげな事例について、「天下人」(戦国の三傑、石田三成、明智光秀、大野兄弟など)、「講談・大衆文芸」(尼子十勇士、真田十勇士、剣豪、忍者など)、「歴史の裏側の世界」(後南朝、影武者、降和、姉小路氏、北畠氏など)、「よく分からない人たちの世界」(毛利新介、服部小平太、原大隅、和田兵部、安田作兵衛、山路将監、島左近など)の四分野に分けて略述されています。
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100 「武田勝頼のすべて」 柴辻 俊六・平山 優 編著 /新人物往来社/2007年刊行/2800円 (2010/06) 平山優、黒田基樹、丸島和洋各氏ら中堅・若手研究者による武田勝頼の事績に関する多様な角度からの論考集であり、また掲載巻末に収録された「武田勝頼家臣団事典」「参考文献目録」「武田勝頼年表」等は「信玄」の場合と異なり、関係類書も少ないことから貴重な刊行物でもあり、新書・文庫の体裁では望むことのできない充実した内容を伴うものといえます。
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99 「長篠の戦い」 (歴史新書y) 藤本 正行 著 /洋泉社/2010年刊行/840円 (2010/06) 「桶狭間・信長の奇襲は嘘だった」に続く信長シリーズの第2弾。信長の事績に関する第一級資料である「信長公記」の諸本を丹念に調査した著者による「長篠合戦論」の集大成。
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98 「長篠の戦い」 (学研M文庫) 二木 謙一 著 /学研/2000年刊行/570円 (2010/06) 1989年に刊行された「長篠の戦い」を文庫化したもの。主に「改訂増補長篠日記」、「改正三河後風土記」の記述をもとに必要に応じて「信長公記」、「甲陽軍鑑」、「当代記」、「武徳編年集成」等を引用し小説風に読みやすく記述されています。徳川勢による鳶ノ巣山砦への奇襲を前段とし、連吾川での武田勢の攻撃方法については所謂「騎馬軍団」とはせずに、「長柄鑓」を中心とした突撃であるとの推定。ただし3列に配された鉄砲3千丁による一斉射撃説については、列単位の循環移動方式ではなく定位置での交替立射方式によるものであろうと推定。
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97 「戦国の合戦」 (学研新書) 小和田 哲男 著 /学研/2008年刊行/790円 (2010/06) 戦国史専門の著名な歴史学者の執筆による戦国の合戦論で、図解も多く大変分かりやすい内容となっています。ただし残念なことに、従来の鉄砲伝来の通説(1543年)を否定しつつも戦国時代の時代区分の指標とする、桶狭間合戦における梁田出羽守の活躍を不動の史実として言及する、自焼・自落の事例を考慮しない戦国時代の武士の忠誠心に関する過大評価、賤ヶ岳合戦時の大垣から木之本への豊臣秀吉軍の移動時間を「川角太閤記」の記述を引用し時速10km以上とする(仮に身ひとつで走破したとしても、甲冑や武具などの輸送はどうしたのか、到着時の肉体的な疲労はどうなのか)などの疑問を生じる記述も少なくありません。また長篠合戦での鉄砲3段打ちについては、これまでの一斉射撃説に対する批判を受止め、3人1組のグループ方式による3段打ち説を支持する立場を明らかにしています。
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96 「桶狭間・信長の「奇襲神話」は嘘だった」 藤本 正行 著 /洋泉社/2008年刊行/760円 (2010/05) 戦国史上最も著名な合戦とひとつとされる桶狭間合戦。信長の事跡に関する基礎史料として評価の高い「信長公記」(太田牛一/著)の詳細な分析にを基に、「信長の戦争」(講談社学術文庫)等の上梓により、かつての通説であった「迂回奇襲説」を否定し今や定説となった感のある「正面攻撃説」を唱えた著者の執筆。
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95 「考証 織田信長事典」 西ヶ谷 恭弘 著 /東京堂出版/2000年刊行/740円 (2010/05) 織田信長の人間像、尾張統一から本能寺の変に倒れるまでの事績、信長の一族とその子孫、本能寺の変をめぐる諸説の4章から構成され、項目立ての事典というよりも寧ろ読み物として通読しやすい内容となっています。
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94 「新説 桶狭間合戦」 橋場 日月 著 /学研/2008年刊行/740円 (2010/05) 日本史上有名な桶狭間合戦に至る背景について、信長の父の織田信秀の時代から多様な史料を元に駿河今川氏と尾張織田氏の対立抗争の図式について論及しています。
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93 「武田信玄合戦録」 芝辻 俊六 著 /角川書店/2006年刊行/1400円 (2010/05) 笹本正治氏の語るユニークな武田信玄像とは対極的で、穏やかで分かりやすい語り口が読者の共感を誘います。信玄堤の築造、軍用道路としての棒道に関する信玄の関わりを肯定的に捉え、山本勘助の存在についてもより実在説に近い立場で解説。
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92 「戦国時代用語辞典」 外川 淳 編著 /学研/2006年刊行/1600円 (2010/05) 甲冑、武具の図解に始まり軍勢の編成、合戦の実像、文化、信仰、経済などの多岐にわたる構成内容となっており入門書としてお買い得の一冊。記述内容の詳細な部分については議論の余地もありそうですが、そうした些細な問題を別にすれば、単なる辞典として活用するよりも通読をした方が一層の面白味が湧いてきます。
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91 「手にとるように日本史が分かる本」 岸 祐二 著/加来 耕三 監修 /かんき出版/2007年刊行/1400円 (2010/02) 2001年に出版されたものの改訂版で、日本人の起源からバブル経済の崩壊まで124のテーマに分けて略述されています。「まえがき」を加来氏が記していることは確かなのですが、本文の記述内容について監修者がどの程度関わったのかという部分がいまひとつ不明瞭な印象。それほど穿った見方をしなくとも、著名な監修者の名前にあやかった販売促進の意図が透けて見えるようにも。尤もそうしないと売れないという現実的な問題もあり致し方の無いところなのかもしれません。
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90 「兵と農の分離」 (日本史リブレット) 吉田 ゆり子 著/山川出版社/2008年刊行/800円 (2009/12) 天正3年(1575)の長篠合戦の前日鳶巣砦で討死を遂げた武将の一人に、下伊那郡阿智村浪合を在所とした波合備前(胤成)という人物に着眼。主にこの人物の足跡と、主家である武田氏滅亡後のその子孫の仕官先を等の経歴を辿ることにより信濃地方における兵農分離という社会構造変革の実態の解明に迫る地道な論考です。
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89 「合戦の文化史」 二木 謙一 著/講談社/2007年刊行/960円 (2009/10) 「合戦の舞台裏」(1979/新人物往来社)を底本とした旨が、奥付の見開きページに記されていることか示すように、ややテーマが異なるものの近年に出版された「日本軍事史」(2006/吉川弘文館)と比べますと、ややアカデミズム要素の強い古典的歴史観を基調にしているように思えてなりません。
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88 「人事の日本史」 山本 博文ほか 著/毎日新聞社/2005年刊行/1600円 (2009/09) 3本の書下ろしを除きますと、基本的には毎日新聞社より刊行されている「週刊エコノミスト」(2003年10月7日号から2004年9月7日号)に掲載されていた内容を単行本化したもので、巻末には3名の共著者による対談集も掲載。
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87 「戦国の村の日々」 水藤 真 著/東京堂出版/1999年刊行/2200円 (2009/08) 16世紀初頭文亀元年(1501)に自らの領地である和泉国日根野荘(いずみのくに ひねのしょう)へと下向し、都合4か年にわたりその直轄支配を試みた前関白九条政基(さきのかんぱく くじょうまさもと)の日記である「政基公旅引付」(まさもとこう たびひきつけ)に関する考察を中心とした詳細な論考集です。
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86 「直江兼続のすべて」 花ヶ崎盛明 編著/新人物往来社/2008年刊行/2800円 (2009/06) 下段の著書と同様に大河ドラマ「天地人」の放映にあやかって出版された新装版。11名の郷土史家等の執筆により構成されるという事情から、兼続の出自、御館の乱などの個所でやや重複する個所が多いこと、謙信の後継者決定の顛末に関する記述の相違、歴史小説的な記述と文献史学的な論考など虚実が入り混じった部分も散見され、幾分まとまりを欠く傾向のあることは否めないものと思われます。
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85 「名参謀 直江兼続」 小和田 哲男 著/三笠書房/2008年刊行/1300円 (2009/06) 大河ドラマの「天地人」を意識した出版物で、しかも著者は戦国史の分野では著名人なのですが、残念ながらその内容については「直江兼続」について述べられている個所よりも、上杉謙信、石田三成、戦国時代全般などについて書かれた部分が多く全体としては浅く広くという印象が否めませんので、このため直江兼続の生い立ちや事跡などについて詳しく知りたいという場合には肩透しとなる内容で、如何にも出版元の都合で編集されたという印象が強く感じられます。
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84 「島津義弘の賭け」 山本 博文 著/中央公論新社/2001年刊行/724円 (2009/06) 島津義弘というと関ヶ原合戦における撤退戦が余りにも著名です。しかし筆者は島津家文書の整理に関った立場に基づき、豊臣氏の九州平定時から文禄・慶長の役を経て関ヶ原合戦に至るまでの島津家内部の動向を当該資料等に沿って極めて詳細に考察しているところにこの本の魅力があるものと思われます。
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83 「室町期南奥の政治秩序と抗争」 垣内 和孝 著/岩田書院/2006年刊行/6900円 (2008/11) 篠川・稲村公方に関する論考に始まり二本松氏、塩松石橋氏、二階堂氏、岩城氏、芦名氏、白川結城氏・小峰氏、田村氏、伊東氏・相良氏等の有力領主階層に関する15世紀から16世紀の動向を詳細に記述するとともに、これらに関連する中世城館等についても概括的に論究しています。
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82 「北武蔵西城州の秘史」 川鍋 巌 著/上毛新聞社/2006年刊行/5250円 (2008/10) 神流川沿いの戦国期中世城郭を巡る戦い。このあたりの地域の歴史的経緯に関する基本的理解が全面的に不足していることを痛切に感じる昨今であります。
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81 「会津 芦名四代」 林 哲 著/歴史春秋社/1982年刊行/1600円 (2008/09) 9月上旬の入院の際に目を通していたうちの一冊で、初版から四半世紀以上の年月が経過しているにもかかわらず再版が継続されているという事情が示すように、戦国大名芦名氏について4代(盛氏−盛興−盛隆−義弘(盛重))の事跡を克明に叙述した他に類例を見ない好著であると思われます。
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80 「史伝 伊達政宗」(学研M文庫) 小和田 哲男 著/学研/2000年刊行/590円 (2008/08) 曾祖父の代からの事跡を追いつつ伊達氏の本拠地の変遷、田村氏との関係、人取橋の合戦、畠山義綱の事件、窪田の戦い、摺上原の合戦、大崎一揆の煽動、遣欧使節などひと通りの事項について述べられていますの。本文冒頭の14頁、206頁等の西暦表示について部分的に明らかな誤植が見られますが、伊達政宗の事跡を一般向けにできるだけ分かりやすく記述したという点では巻末に収録されている略年譜とあわせて入門書に相応しい内容となっています。
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79 「動乱の中の白河結城氏」(歴春ふくしま文庫) 伊藤 喜良 著/歴史春秋社社/2004年刊行/1200円 (2008/08) 南北朝時代鎌倉時代末期から前半にかけて南奥で大きな勢力のあった白河結城氏についての動向を論じた南北朝期の政治史を専門分野とする著者の執筆によるものですが、専門的な論考集ではなく一般読者を意識した分かりやすい記述となっている点は実に助かります。
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78 「負け組の戦国史」(平凡社新書) 鈴木 眞哉 著/平凡社/2007年刊行/760円 (2008/07) 勝ち組、負け組といった分類が流行った時期に出版されたもので、敗者の立場に立ちその敗因について結果論による通説を否定する姿勢が窺えます。
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77 「絵解き 雑兵足軽たちの戦い」(講談社文庫) 東郷 隆氏 著/講談社/2007年刊行/495円 (2008/04) 「戦国武士の合戦心得」(講談社文庫)の姉妹編で、源平の合戦から戦中にいたるまで下級戦闘員としての足軽・雑兵のな歴史的変遷を追うという体裁。
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76 「関ヶ原合戦と大坂の陣」(戦争の日本史 17) 笠谷 和比古 著/吉川弘文館/2007年刊行/2500円 (2008/03) 必ずしも関ヶ原合戦の結末のみでは、その後の徳川家による幕藩体制の方向性が確立された訳ではなく、戦前においては複雑な対抗関係が存在したという分析に基づき本論が展開されます。著者によれば、その対抗図式として、「淀君−北政所」「武断派−吏僚派」「中央集権−地方分権」「豊臣政権内部の主導権争奪」「徳川家−豊臣家」という5つの対抗図式を示しています。
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75 「真田雪村のすべて」 小林 計一郎 編著/新人物往来社/1989年刊行/2600円 (2008/02) 専門分野を分担し複数の著者による編著のため幾分重複するような記述が見受けられるものの、引用史料についても適宜明示がなされストレスなく読み進むことができます。
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74 「真田雪村 伝説になった英雄の実像」(PHP新書) 山村 竜也 著/PHP研究所/2005年刊行/720円 (2008/01) 戦国武将人気ベスト5に必ずランクインすると思われる著名人の伝記で、巻末には略年譜が付されています。新書版という出版形態であるため全体として引用資料についての解説、史料評価が不足気味であることについては、ある程度致し方のないところかも知れません。
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73 「一向一揆と石山合戦」(戦争の日本史14) 神田 千里 著/吉川弘文館/2007年刊行/2500円 (2007/12) 著者は土一揆、一向一揆研究の第一人者であり、従来の民衆の権力に対する階級闘争的な側面を重視してきた通説に波紋を投じ、新たな一向一揆像の再構築を試みた意欲作です。とりわけ戦国期の本願寺が教団としての布教活動を拡大するために、常に足利幕府との協力友好関係を模索・維持することを基本方針としていたということを論証することに力点が置かれているように思われます。
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72 「今川義元」(ミネルヴァ日本評伝選) 小和田 哲男 著/ミネルヴァ書房/2004年刊行/2400円 (2007/12) 地元静岡出身の著者による海道一の弓取とうたわれた戦国大名今川義元の評伝。義元以前4代前の範忠にはじまり、義忠(伊勢盛時−伊勢宗瑞−の姉妹を正室とする)、氏親、兄氏輝の事蹟、義元の実母寿桂尼の政治的手腕、大原雪斉の人物像などにも論及。駿河は石高も少ない小国であるにもかかわらず、今川氏の繁栄を支えた要素として金山収入、交易の存在を明示する部分は至って明快。
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71 「信長と消えた家臣たち」(中公新書) 谷口 克広 著/中央公論新社/2007年刊行/800円 (2007/11) 織田信長の家臣団研究に関する第一人者の著書。著名人だけではなくどちらかといえば無名に近い人物も含めて、合戦での討死、誅殺、粛清と様々な形で歴史からその名と足跡を消していった戦国武将の群像が描かれています。各項目が信長の天下布武に貢献し重用・利用された一人一人の家臣たちの墓標のようにさえも思えてくる、著者の彼らに対する暖かな眼差しが伝わる好著。傲慢、気まぐれ、短気、猜疑心旺盛という大変扱いにくい性格と考えられる信長に仕えていた家臣たちの忍従の日々に思いを馳せたくなる内容です。
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70 「上杉謙信」(ミルルヴァ日本評伝選) 矢田 俊文 著/ミネルヴァ書房/2007年刊行/2200円 (2007/11) 著者は戦国期の越後は現在の我々が認識しているような水田が延々と連なるような豊かな土地ではなく、また他の東国においても見られるように平地の居館から要害としての山城へ国人領主の拠点が移動するに伴い集落も移動していたことをと指摘は興味深いものがあります。
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69 「武田信玄」(歴史文化ライブラリー) 平山 優 著/吉川弘文館/2006年刊行/1700円 (2007/08) 武田氏研究の若手では近年その第一人者として評価の高い著者による最新の著書です。信玄の軍事・外交、税制・分国法・甲州金の産出、家臣団編成と軍役など多岐にわたる豊富な記述により構成。打ち続く天災・飢饉に加え国衆・土豪階層に対する軍役等の厳しさは、結果的に恰も自転車操業のような膨張政策を採用することを余儀なくさせたことが見えてきます。
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68 「戦史ドキュメント 桶狭間の戦い」(学研M文庫) 小和田 哲男 著/学習研究社/2000年刊行/540円 (2007/07) 藤本正行氏らの「信長公記」の検証を参考に、従来の通説とされていた迂回奇襲説を返上し、新たに「正面奇襲説」を唱えた「桶狭間の戦い」(1989)を文庫化したもの。文庫化に際して、「生の史料を引用」し著者の考察過程を提示したとの序文が記されています。
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67 「信長は謀略で殺されたのか」(新書y) 鈴木 眞哉 / 藤本 正行 共著/洋泉社/2005年刊行/780円 (2007/07) いまや定説ともされかねない感のある「本能寺の変」における各種の謀略説を逐一批判的に検証したもので、とりわけ足利義昭を黒幕と指摘する藤田達夫氏の「謎解き本能寺の変」(講談社現代新書)、イエズズ会を黒幕とする立花京子氏の「信長と十字架」(集英社新書)の論調を史料の誤読など実例を挙げて痛烈に批判を展開しています。
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66 「戦国鉄砲・傭兵隊」(平凡社新書) 鈴木 眞哉 著/平凡社/2004年刊行/760円 (2007/06) 鈴木孫一、佐武伊賀守らに代表される謎の多い紀州雑賀の土豪集団の実像を各種の史料から明らかにした労作で、絶版となっている旧作の「紀州雑賀衆・鈴木一族」(新人物往来社/1984)の入手が困難な現在では戦国期雑賀衆に関する信頼できる数少ない入門書的存在。
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65 「鉄砲と日本人」(ちくま学芸文庫) 鈴木 眞哉 著/講談社/2000年刊行/1300円 (2007/06) 1997年に洋泉社から出版されていた単行本を文庫化にあたり改定したもの。著者は雑賀一族の末裔と自認され、在野の軍事史・戦国史研究者として従来の戦国史、とりわけ合戦のあり方や火縄銃が果たした役割に新たな視点を切り開いたユニークな執筆活動で著名。
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64 「謎とき日本合戦史」(講談社現代新書) 鈴木 眞哉 著/講談社/2001年刊行/740円 (2007/05) 古代から太平洋戦争に至るまでの日本人の戦闘行動・様式を中心にした軍事史の通史とでもいうべき内容です。
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63 「古戦場 敗者の道を歩く」(講談社+α新書) 下川 裕治 著/講談社/2007年刊行/800円 (2007/05) 山本勘助の実在、武田の騎馬隊、川中島合戦の戦死者数など史実と軍記物・小説の世界を取り違えているような部分はさておき、古戦場、史跡散策ガイドとしても活字と案内図が符合していないなど情報が不足気味で些か中途半端な内容。
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62 「信玄の戦争」(ベスト新書) 海上 知明 著/KKベストセラーズ/2006年刊行/780円 (2007/04) 戦国大名の兵士の動員力に対する過大評価、合戦の死傷者の人数、「騎馬隊」の存在等やや論旨の展開にに実証性と信憑性を欠く部分が目立つ印象があります。然し信玄の戦略における栄光と挫折の経緯の大半が「孫子」の軍略の採用に起因するものであるという仮説に徹底的に拘泥する姿勢にはある種の羨望さえ感じます。また永禄4年の川中島合戦における謙信の戦略に信玄が誘い込まれるという着想の部分にも大変興味深いものがあります。
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61 「硫黄島」(光人社NF文庫) R・F・ニューカム 著/文芸春秋/2006年新装改訂版刊行/762円 (2007/04) 日本軍の戦死者2万人に対して3万人近い死傷者と戦線離脱者を数えることとなった米軍の損害。記されている内容は決して新発見の資料によるものではありませんが、然しそのことが逆にノンフィクションとしてのリアリズムのインパクトを強める結果となっています。
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60 「十七歳の硫黄島」(文春新書) 秋草鶴次 著/文芸春秋/2006年刊行/800円 (2007/04) 太平洋戦争の陸上戦闘において、唯一米軍の戦傷者数が日本軍のそれをうわまったとされる硫黄島の戦い。この戦いに僅か十七歳で海軍通信兵として加わり重傷を負いつつも5%未満の生存者の一人となった著者自身の手記。当時の手記そのままではなく後年記憶や公開された関係資料を基に書き加えたものであるため、現代史の史料としては些か扱いにくい性格もあります。然し戦うべき武器・弾薬どころか食料さえもなく指揮系統を喪失し組織的戦闘が困難となった以降も降伏せず餓死・戦病死していった多くの兵士の姿が様子が偲ばれます。日本軍の将兵の無念さ、生に対する渇望が今なお伝わってくる、まさに涙なくしては読みすすむことのできない余りにも悲惨な戦争体験の記録であります。
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59 「バカ殿様こそ名君主」(双葉文庫) 山本博文 著/双葉社/2005年刊行/571円 (2007/03) 近世史料を専門家の著書である「武士は禿ると隠居する」(2001/双葉社)を加筆訂正したもの。下記の著作と比べると著者自身も語っているように史料的な実証性を欠く傾向は否めないことは事実。然しその一方で気軽に江戸時代の歴史にさほど関心がなくても当時の支配階級である武士の暮らしぶりに接するには飽きさせない分かりやすい内容構成となっています。
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58 「日本の一級史料」(光文社新書) 山本博文 著/光文社/2006年刊行/700円 (2007/03) 著者は近世史料を専門分野とする東大史料編纂所教授。かつて長州藩江戸お留守居役の福間彦右衛門の日記である「公儀所日乗」を元に著述した「江戸お留守居役の日記」(講談社学術文庫)で第40回日本エッセイスト・クラブ賞を受賞した経歴の持ち主。
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57 「偽書武功夜話の研究」(新書Y) 藤本 正行・鈴木真哉 著/洋泉社/2002年刊行/780円 (2007/03) 1980年代末から現代に至るまで国営放送局の大河ドラマや著名作家の作品に大きな影響を与えた「武功夜話」(「前野家文書」)に対して在野の戦国史研究者がその偽書としての可能性を徹底的に検証した好著。墨俣一夜城の虚構を「築城史料」からその縄張りの構造の非合理性を追求していく過程は圧巻で強烈な説得力を感じます。
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56 「戦国10大合戦の謎」(PHP文庫) 小和田 哲男 著/PHP出版/2004年刊行/457円 (2007/03) 著者は NHKの「その時歴史は動いた」などのゲストとしてよく登場する方ですが、事前の予想に違わず引用・出典の曖昧な個所が目立ち些か気になることもしばしば目にします。
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55 「戦国時代の大誤解」 鈴木 真哉 著/PHP出版/2007年刊行/700円 (2007/02) 今までの著作の中から美味しい部分を抜粋したような内容で、病院での待ち時間や電車の中などで気軽に読むには誠に好都合な47の項目から構成され、ひとつのエピソードがちょうど電車一駅分に匹敵するような体裁かと思われます。
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54 「山本勘助」 平山 優 著/講談社/2006年刊行/720円 (2007/02) 後世の近世以降に脚色された虚像を排し、あくまでも「甲陽軍鑑」に描かれた山本勘助の記述を丹念に調べ上げた労作で、山本勘助の実在・否実在論議よりも、そこに描かれた「山本勘助像」から何を読み取るべきかという方向付けを示す著作となっている。「軍師」としての山本勘助ではなく、あくまでも「足軽大将」としてのまた、「市川文書」に登場する「山本菅助」についてその文書の背景を詳細に解説すると共に、「山本勘助のモデル」としての可能性の高いことも示唆。
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53 「軍師 山本勘助」 笹本正治 著/新人物往来社/2006年刊行/2000円 (2007/02)
「甲陽軍鑑」に描かれた軍師山本勘助の存在に懐疑的な立場からの視点で著述されたものの代表作といってよいかもしれません。「甲陽軍鑑」により、その実在も含めてデフォルメされた人物が大河ドラマの主人公となっているという社会状況下において、「甲陽軍鑑」の矛盾した記述、明確な誤記などについて実例を挙げて整理していくという手法は誠に手堅く興味深いものがあります。
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52 「鉄砲と戦国合戦」 宇田川 武久 著/吉川弘文館/2002年刊行/1700円 (2006/11)
火縄銃などの古銃研究の第一人者である著者が鉄砲の砲術とその流派、製造技術などのメカニズムについて考証した好著。これよれば我国で幕末まで3世紀もの長期間にわたり火縄銃が用いられたのは、一発必中の武芸として伝えられていったことによるものであり、火打石などの装填容易な銃よりも発射時の衝撃が少なく命中精度の高いことが求められたとのこと。
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51 「日本軍事史」 高橋 典幸ほか 共著/吉川弘文館/2006年刊行/4000円 (2006/10)
弥生時代末期から現代に至るまでの兵力の動員と物資の調達を中心にすえた我国の軍事史の通史ですが、通読するよりも必要個所だけを参考にするという読み方の方が頭に入りやすそうです。太平洋戦争の兵器の開発と戦国時代の兵力の動員や装備の間には明らかに大きな隔たりが感じられます。
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50 「土一揆の時代」 神田 千里 著/吉川弘文館/2004年刊行/1600円 (2006/10)
15世紀を中心に畿内地方で頻発した土一揆。正長の土一揆、嘉吉の土一揆などそれぞれの土一揆により守護、幕府側対応も異なり、民衆蜂起の側面もあれば下級武士階層による強訴・略奪、さらには幕府内の権力闘争と関わっている事例もあるとのこと。40年以上前に高校の日本史の教科書に記述されていた説明とは大きな隔たりが。
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49 「信州史ノート 戦国大名と信濃の合戦」 笹本 正治 著 一草社
2005年刊行 1600円(2006/08) 下記の「実録・戦国時代の民衆たち」の姉妹編とのことですが、ソフトカバーのため低価格。戦国時代の武将の中でも人気ベスト10には必ず登場するであろう武田信玄、上杉謙信の事跡と、かの有名な川中島の合戦の様子と共に、後北条氏を含む三大国の間で懸命にその生き残りをかけた真田昌幸を始めとするその一族の活躍などが記されています。このため、大変分かり易く興味を惹かれる一版向けの内容となっています。
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48 「歴史の闇に消えた 実録・戦国時代の民衆たち」 笹本 正治 著 一草社
2006年刊行 2190円(2006/08) 信濃・甲斐・越後の戦国時代に生きた一般民衆に関する生活の実像を分かり易く記述した労作。戦国時代の不順な気候と頻発する地震台風などの自然災害、戦乱の犠牲者としての民衆の実態、金山衆・番匠・杣や大鋸などの林業従事者の活躍、木綿・蕎麦・里芋の栽、培山の幸などの各種の産物、物流経済と商人たちの活動、善光寺、諏訪神社、戸隠神社などの信仰のあり方と政治権力との関係、民間信仰・占術などの民俗等の各分野わたる内容が記されています。
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47 「戦国北条一族」 黒田 基樹 著 新人物往来社
2005年刊行 2800円(2006/07) 刊行した出版社からも推察できるように、あくまでも一般向けの後北条氏5代の人物とその事跡を記述した通史として記述されています。しかし、本来は関東の戦国時代の領国支配などをテーマとした若手の歴史研究者であるために、やや専門的な色彩もあり所々に文章表現の固さなどが感じられます。
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46 「合戦の日本地図」(文春新書)武光 誠/合戦研究会 著 新潮社
2003年刊行 790円(2006/07) 源平の合戦から幕末の戊辰戦争に至るまでの北海道から九州を舞台にした広範な各地で戦われたとされる20の合戦について概説したもの。
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45 「徳川将軍家の十五代のカルテ」(新潮新書)篠田 達明 著 新潮社
2005年刊行 680円(2006/06) 徳川幕府歴代将軍15人の主な病歴と死亡原因などを推定したやや変わった傾向の内容。かつて学術的な調査により明らかとなった歴代将軍の遺体の身長とその身長と同じ大きさの位牌(三河の大樹寺)などから、歴代将軍の体格は大柄であったとの説もある8代吉宗を含めて何と全員が160cmに満たないとのこと。
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44 「徳川将軍の意外な裏事情」(PHP文庫)中江 克己 著 PHP研究所
2004年刊行 500円(2006/06) 徳川幕府15代の歴代将軍の知られざるエピソードを収録。「徳川将軍百話」を底本にして、より一般向けに再編集された文庫本という性格上から、史料・文献について明示している個所は殆どなく読み進むにつれて次第にストレスが...またどちらかといえば無難な通説に従った内容という印象があります。歴史的著名人とされる家康・秀忠・家光・綱吉・吉宗・家斉・慶喜以外に着目するような人物を新たに見出すことを期待していたのですが、結果的には学生の時に勉強した時と同様に残りの8名についてはやはり印象の薄さは拭えないという結果に落ち着きました。
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43 「大名の日本地図」(文春新書)中島 繁雄 著 文芸春秋
2003年刊行 940円(2006/06) 近世末期に存在していた一万石以上の280家にのぼる大名家と、その立藩から廃藩までの経緯をダイジェストで辿った内容。18世紀中頃までの改易・減風・転封などの目まぐるしいまでの変遷、相次ぐ天災・飢饉・財政危機などの苦渋の日々を再認識。また、幕末の政治変動の対応に右往左往する小藩の悲哀も随所に。大名家単位の索引と各藩の所在地に県名が表示されると藩史小事典として便利なのですが。
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42 「江戸の旗本事典」(講談社文庫)小川 恭一 著 講談社
2003年刊行 667円(2006/05) 徳川幕藩体制を支えた旗本・御家人の実情を史料に基づき、丹念に旗本・御家人の家計、作法、家督相続、役職、大概順などを解説しています。著者は三田村鳶魚( みたむら えんぎょ )の愛弟子の一人で、在野の旗本・御家人、近世大名研究の第一人者。
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41 「真説関ヶ原合戦」(学研M文庫)桐野作人 著 学習研究社
2000年刊行 570円(2006/04) 西暦2000年といえば関ヶ原合戦から400年後という節目に当たり、こうした商業的動機から刊行された文庫書き下ろしの作品です。出版の動機は別として資料を基に丹念にしかも簡潔に関ヶ原合戦なおける謎を20のテーマに纏めた力作で値段の点でもお買い得。
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40 「刀狩り」(岩波新書)藤木久志 著 岩波書店
2005年刊行 780円(2006/03) 豊臣秀吉の行った「刀狩り」に止まることなく、近世を通じての庶民の武器所有事情から、明治初期の「廃刀令」、さらに戦後のGHQによる日本の武装解除に至るまでその実情を検証しています。著者によれば秀吉の「刀狩り」はあくまでも身分制度を安定化するための帯刀する権利の限定と剥奪であり、近世以降も庶民の武器の所有は緩やかな規制に過ぎなかったとされています。
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39 「戦国大名の危機管理」(歴史文化ライブラリー)黒田基樹 著 吉川弘文館
2005年刊行 1700円(2006/03) 相次ぐ飢饉そして越後上杉氏の侵攻さらに武田氏の侵攻という関東情勢のなかで後北条氏の当主となった北条氏康が実施した領国経営のための検地、村請制度、公事赦免令、構造改革、撰銭の横行に対する通貨安定対策、徳政令、軍役改革等について検証しその領国経営の実態を明らかにした労作。
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38 「武田信玄像の謎」(歴史文化ライブラリー)藤本 正行 著 吉川弘文館
2006年刊行 1700円(2006/02) 武田信玄の肖像として、長い間信じられていた高野山成慶院の所蔵する絵画について、描かれている家紋、髷、絵師の落款、構図などの様々な要素からこれを別人の肖像画であると結論付けた著作。
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37 「絵解き戦国武士の合戦心得」(講談社文庫)東郷 隆 著 講談社
2004年刊行 495円(2006/02) 戦国時代の組討に始まり、鎧の構造とその防御性能や弱点、弓・鑓・刀・鉄砲の種類とその取り扱い、切腹の作法などに至るまで詳しくビジュアルに解説したもので、考証についての荒さに目をつぶればエンターティメントとしては実に楽しめる内容となっています。
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36 「後北条氏」(有隣新書)鈴木良一 著 有隣堂
1988年刊行 1000円(2006/01) 後北条氏5代の100年間にわたる通史の形をとった一般向けを意識した著作ですので、もちろん最近の後北条氏研究に関する成果は反映されていませんが、早雲、氏綱、氏康、氏政、氏直の事蹟を始めとして、相模・武藏地域の支配の様子が分かり易く記述されています。
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35 「戦国大名の日常生活」(講談社選書メチエ)笹本 正治 著 講談社
2000年刊行 1700円(2006/01) 甲斐武田氏の信虎、信玄、勝頼三代の歴史と領国支配の実像を一般向けに解説したもの。軍制、公租、経済・流通、家族関係、宗教、甲州法度など多方面にわたっています。
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34 「足利直冬」(人物叢書)瀬野 精一郎 著 吉川弘文館
2005年刊行 1700円(2005/12) 観応の擾乱、南北朝時代の混乱期に突如として歴史の表舞台に現われ、そして去って行った足利尊氏の長子とされる足利直冬の個人伝記です。
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33 「南朝全史」(講談社メチエ)森 茂暁 著 講談社
2005年刊行 1500円(2005/12) 大覚寺統、持明院統の用語のみ辛うじて記憶の片隅にある程度の予備知識しかなかったため、北条氏がその実権を掌握していた鎌倉幕府が天皇家の皇位継承に深くかかわっていたという基本的知識も記憶の彼方となっていた始末。あわせて両統の天皇の御名が全くといってよいほど頭に入っていないため、実際のところ相当に時間を要しました。
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32 「いくさ」福田 豊彦 編著 吉川弘文館
1993年刊行 2200円(2005/11) 「中世を考える」と云うシリーズの中の一冊。主として武士の発生から中世前半までの「いくさ」について、甲冑と弓矢、日本刀などの武具、軍制、合戦の儀礼、武家故実などを始めとしてこれに対する民衆のかかわり方としての逃散・動員・いくさ見物・積極的関与などの様々な様相を描く名著であると考えます。
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31 「保元・平治の乱を読み直す」元木 泰雄 著 日本放送出版協会
2004年刊行 970円(2005/11) 保元・平治の乱は上皇による院政や藤原氏を中心とした摂関家という二大権門による古代王朝末期の政治構造の終焉であり、一部の貴族の武門化を挫折させ平氏政権への道を開きその専横は、地方の武士階層の所領をめぐる争いの種を生じさせ、やがて源頼朝を頂点とする全く異質の東国武士政権誕生への幕開けとなったと指摘しています。
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30 「弓矢と刀剣」(歴史文化ライブラリー)近藤 好和 著 吉川弘文館
1997年刊行 1700円(2005/11) 古代末期の前九年の役から治承・寿永期の合戦における戦い方の実像を「今昔物語集」「平家物語」「源平盛衰記」などの文献や現代に残されている当時の武具等から明らかにした労作です。
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29 「源平合戦の虚像を剥ぐ」(講談社選書メチエ)川合 康 著 講談社
1996年刊行 1600円(2005/10) 源頼朝を中心とする東国に本拠を構えた軍事貴族を頂点とした反乱軍として捉えるという視点からして読者を引き込んでいく書き出し。また石橋山の小競り合いで敗れた源氏の末裔の一人に過ぎない頼朝になぜ共に関東平氏の名族である上総介広常や千葉常胤の上総・下総の万余の大軍が参集したのかという問題は大分以前から気になっていました。
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28 「平家物語 あらすじで読む源平の戦い」板坂 燿子 著 中央公論新社
2005年刊行 1000円(2005/10) 前半の第一部は全く訳の分からない人はそのまま読めば良いし、少々日本史に感心がある人は楽しみながら読みすすむことができる内容です。伝承文学としての平家物語の本質やその成り立ちから発生することが必然とされる多くの異本についても手っ取り早く解説しています。
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27 「北条早雲と家臣団」下山 治久 著 有隣堂 1999年刊行 1000円(2005/10)
大分以前のこととなりますが45年ほど前の子供の時に読んだ歴史を題材にした物語風の本の中では、「北条早雲は出自もはっきりとしない素浪人で仲間を集めてなかば山賊の棟梁な身分から興国寺の城主となるといった」ストーリイが描かれていました。
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26 「後北条氏と領国経営」佐脇 栄智 著 吉川弘文館 1997年刊行 6300円(2005/09)
誠に僭越ながら一言でこの本の特徴を語るならば、「後北条氏(研究)入門」という表現がぴったりの内容となっています。
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25 「武藏の武士団―その成立と故地をさぐる」(有隣新書)
安田 元久 著 有隣堂 1984年刊行 1000円(2005/09) 畠山、河越、豊島、葛西など秩父平氏の一族および足立、比企、熊谷など源氏ゆかりの一族についてその系譜、事蹟、故地などを簡潔に分かりやすく概説しています。またいわゆる武藏七党と呼ばれる横山党を始めとする児玉党、猪俣党、村山党などの同族的中小武士団についても満遍なく解説されています。
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24 「戦国時代の終焉−北条の夢と秀吉の天下統一」(中公新書)
齋藤 慎一 著 中央公論新社 2005年刊行 800円(2005/09) 東国における戦国時代は応仁の乱よりも早く、15世紀半ば鎌倉公方足利氏(古河公方)と関東管領上杉氏の争いである享徳の乱に始まり天正18年(1590年)の後北条氏滅亡に至るまでのおよそ150年間を指すという。
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23 「後北条領国の地域的展開」浅倉 直美 著 岩田書院 1997年刊行 5145円(2005/08) 北条氏邦の鉢形領の形成と支配、小前田衆、荒川衆、吉田氏による荒地の開墾・新田開拓、小島・金窪付近を領した「吉田氏系図」に関する詳細な分析検討、上野の金山在城衆に関する論述、後北条氏の滅亡の直接の原因とされる名胡桃城奪取の当事者猪俣邦憲の地位と出自に関する見解、後北条氏の郷村支配の形態と機構についてあきらかにする郡代、支城、触口、定使などに関する論文などを集めたもの。
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22 「戦国期東国の大名と国衆」黒田 基樹 著 岩田書院 2001年刊行 10395円(2005/08) 戦国時代の関東を中心とした後北条氏、武田氏、越後上杉氏、古河公方などに関わりを持った比較的規模の大きい在地領主層(国衆、他国衆)について綿密な史料検討によりその実像を明らかにしようと試みた研究書です。
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21 「扇谷上杉氏と太田道灌」(岩田選書 地域の中世1) 黒田 基樹 著 岩田書院 2004年刊行 2800円(2005/06) 全編書下ろしではなくすでに発表されているテーマを一冊の本にしていることもあり、各所に重複するような記述も見受けられますが、それが却って理解しやすい要素となっています。タイトルに「太田道灌」が含まれているものの、あくまでも中心となるのは15世紀の半ばから16世紀半ばにかけて相模、武蔵を支配した扇谷上杉氏とそれ以前の豊島氏、江戸氏、さらに千葉氏、江戸太田氏、岩附太田氏の動向に関しての資料に基づく丹念な記述となっています。
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20 「戦国武将あの人のその後」(PHP文庫) 日本博学倶楽部 著 PHP 2002年刊行 580円(2005/05) それぞれの戦国武将の節目となった事件のその後の本人や子孫の行く末について記された100近くのエピソードが収録されている。
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19 「地形で読みとく合戦史」(PHP新書) 谷口 研語 著 PHP 2003年刊行 760円(2005/04) 収録された合戦は古代から関ヶ原の合戦までの50例以上にも上るので、いわゆる斜め読みをするには正にもってこいの編集内容である。
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18 「小田原合戦 豊臣秀吉の天下統一」(角川選書) 下山 治久 著 角川書店 1996年刊行 1300円(2005/04) 主に敗北した後北条氏側の視点から見た秀吉による関東侵攻の背景を解き明かした好著。天正18年の関東の争乱が起きる8年前の信長による武田氏の領国である信濃・甲斐への侵攻、その後の信濃・甲斐の領有をめぐる徳川、後北条氏の争い、キーポイントとなる真田氏の動向、佐竹氏、結城氏などの関東の反後北条勢力などについて平易に解説してたいへん分かりやすい。
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17 「なぜ日本は敗れたのか」(新書y) 秦 郁彦 編著 洋泉社 2001年刊行 780円(2005/03) 現代史の軍事史が専門の著者による太平洋戦争における日本の戦略、戦術的敗因を検証する。大学の卒論の時に参考にさせていただいた「日中戦争」(中公新書)以来の邂逅。当時は異端視されていた現代史の視点が、現在ではニュートラルに近い存在となっており年月の隔たりを感じずに入られない。
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16 「戦国の地域国家」(日本の同時代史12) 有光 友學 編著 吉川弘文館 2003年刊行 3200円(2005/02) 戦国時代の大名領国制による支配形態を中世末期の混乱期における地域国家として捉え国人領主、貫高制、家臣団編成と支配機構、物流経済、情報伝達、鉄砲鍛冶と砲術、城下町の展開、惣国などの様々な視点から論及しその実像を浮かび上がらせている。
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15 「騎兵と歩兵の中世史」(歴史文化ライブラリー) 近藤 好和 著 吉川弘文館 2005年刊行 1700円(2005/01) わが国の古代における弓射騎兵が次第に刀剣などの打物に変わっていく様子を太平記絵巻や今昔物語、平家物語、太平記などの軍記物の記述に基づき現在に遺品として伝えられている武具の解説も含め実証していく内容である。
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14 「石田三成--知の参謀の実像」(PHP新書) 小和田 哲男 著 PHP 1997年刊行 660円(2004/11) 北近江の土豪の出自で義に生きた悲劇の敗軍の戦国武将石田三成の足跡をたどり、その人物像を解明し弁護するという視点で記されている。三成は戦国武将というよりも豊臣政権の事務方の能吏であり、その能吏であるがゆえに福島正則、加藤清正らの反感を買い結果的に関が原で敗れたという。
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13 「明智光秀--つくられた謀反人」(PHP新書) 小和田 哲男 著 PHP 1998年刊行 660円(2004/11) 将軍足利義輝の家臣時代、朝倉義景の家臣時代などの仔細不詳の時期から、信長への出仕以降京都奉行、坂本城城主、丹波地方の平定、「近畿管領」相当職というように出世の階段を上っていく光秀の軌跡を追う。
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12 「謎とき本能寺の変」(集英社新書) 藤田 達生 著 集英社 2003年刊行 700円(2004/07) 本能寺の変は中世から近世への転換期に起こった守旧派と改革派の構造改革をめぐる争いだった、といわれるとなんだかどこかのアジアの国の政治状況が思い浮かぶ。
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11 戦国15大合戦の真相(平凡社新書) 鈴木 眞哉 著 平凡社 2003年刊行 760円(2004/06) 戦国の戦いの実情は時代小説のようにカッコよくはない。星3つを標準とした場合、「○○の真相」と言いながらも、必ずしも真相に迫りきっていないもどかしさもあるように思うのと、時折「運」や「ツキ」で説明するところもあり減点1。
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10 吉良上野介を弁護する(文春新書) 岳 真也 著 文芸春秋 2002年刊行 760円(2004/05) 元禄太平の世の今風に言えば集団テロである忠臣蔵にまつわる俗説を排除し当時の根本資料に基づき事件の真相に迫っている。
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9 信長の親衛隊--戦国覇者の多彩な人材(中公新書) 谷口 克広 著 中央公論新社 1998年刊行 760円(2004/07) 信長の天下統一を支えたとされるなかば無名の側近たちが主役であり、信長政権を行政、外交、軍事などの各分野で献身的に支えた近習(馬廻り衆、小姓衆の一部と著者は言う)と呼ばれる人々の実像とその業績を丁寧にたどる内容となっている。
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8 織田信長合戦全録〜桶狭間から本能寺まで 谷口 克広 著 中央公論新社 2002年刊行 円(2004/06) 織田信長が関与した約30年間にわたる合戦の実相を「信長公記」などの信頼できる資料から解説した労作である。
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7 「鉄砲隊と騎馬軍団〜真説・長篠合戦」 鈴木 眞哉 著 洋泉社 2003年刊行 720円(2004/06) 長篠の合戦は歴史的戦術革命ではなかったという結論に至るまでの具体的な論証が示されており、また当時の馬は荷物運搬程度の駄馬であり、無敵の武田騎馬軍団は物理的に存在しなかったとしている。
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6 「目からウロコの戦国時代」 谷口 克広 著 PHP 2003年刊行 619円(2004/06) 歴史的事実ってあてにならないという50のエピソード。1話が4,5ページなので文庫サイズであることを通勤電車の車内で読むのに最適な一冊。戦国時代の戦いは武田信玄や上杉謙信を始めとして庶民に対する乱暴・狼藉・略奪・放火が常識だった....。桶狭間の合戦は奇襲ではなくあくまでも正面攻撃であった....。しかし引用している鈴木真哉氏の合戦方法(通常接近戦は行われず、騎馬も下馬して弓矢・長槍による間接的な戦闘が中心であった)を考え合わせると戦い方の様相自体について従来のイメージを大きく変えざるを得ないことになる。
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5 「真説・川中島合戦〜封印された戦国最大の白兵戦」 三池 純正 著 洋泉社 2003年刊行 720円(2004/08) 「甲陽軍鑑」「川中島五度合戦次第」 などについて、その作成された経緯から歴史的資料としての信憑性を否定し、現地の調査を中心にして栄禄四年の激戦といわれた四度目の川中島の合戦の実像を再現している。川中島の合戦の背景は慢性的な飢饉に悩まされた甲斐の領主武田信玄の海沿いの土地への進出をベースにした善光寺平の権益を巡る国境紛争としての性格を有していた。また、その激戦は両軍が善光寺街道を南北から移動する間に偶発的に鉢合わせした結果であるとしている。
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4 信長の戦争〜「信長公記」に見る戦国軍事学(講談社学術文庫) 藤本 正行 著 講談社 2003年刊行 1000円(2004/08) 「信長公記」伝本の徹底した研究調査により「信長公記解題」の様相を呈する序章をベースに桶狭間の合戦から長篠の合戦までを従来の定説を排除し良質な資料に基づく新解釈を世に示した好著の復刊。然しそこで敢えていうならば、「信長公記」が桶狭間の合戦年を「天文21年」(1552年)と「記述を誤っている」ことに対して、単に「永禄3年(1560年)の誤り。後世の加筆であろう。」と簡単に処理している点が疑問として残ります。
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3 「飢餓と戦争の戦国を行く」(朝日選書) 藤木久志 著 2001年刊行 朝日新聞社 1300円(2004/10) 旱魃・長雨による凶作、飢饉、疱瘡などの疫病、そして戦乱と中世に生きる人々は常にこれらから逃れられない運命にあった。
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2 「雑兵たちの戦場」(中世の傭兵と奴隷狩り) 藤木久志 著 1995年刊行 朝日新聞社 2400円(2004/10) 「飢餓と戦争の戦国を行く」の以前にかかれたものであるが、テーマの統一性についてはこちらのほうがお勧め。九州豊前地方の事例を中心に雑兵たちによる人の収奪(奴隷狩り)の実態が資料に基づき克明に明らかにされている。
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1 「刀と首取り」(戦国合戦異説)平凡社新書 鈴木眞哉 著 2000年刊行 平凡社 660円(2004/10) タイトルとは少し違って、もっぱら刀が合戦の中でとりわけ戦国時代にどのように使われたのかという論証が、例によって「感状」を統計的に分析した結果に基づき明らかにされている。
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