アクセスありがとうございます。  専門的な文献・史料を読み取る能力がなく、読了の雑感といったあたりにございます。  
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 1 戦国の山城をゆく  2 中世北武蔵の城  3 城館調査ハンドブック  4 城が見た合戦史
 5 関東の城址を歩く  6 城と城下町  7 中世東国の領域と城館  8 戦国の城を歩く
 9 戦国の城 10 日本の古城・名城 11 名城の日本地図 12 日本百名城
13 もう一度学びたい日本の城 14 城破りの考古学 15 日本史小百科 城郭 16 中世武士の城
17 土一揆と城の戦国を行く 18 大坂城-天下の名城- 19 大坂城-歴史群像名城シリーズ 20 大坂城
21 大坂城の謎 22 大阪城400年 23 名城と合戦の戦国史 24 ふくしま紀行 城と館
25 戦国時代の城 26 中世の合戦と城郭 27 日本の名城都道府県別ベスト10 28 知識ゼロからの日本の城入門
29 こんな城もあったんだ 30 こんなにすごい「日本の城」 31 城巡礼東京45ヵ所めぐり 32 城館調査の手引き
33 日本から城が消える 


33 冊






  33 日本から城が消える
     加藤 理文 著/洋泉社/2016年刊行/900円 (2016/12)  

 ここ10年ほどのあいだにいわゆる城郭ファンの数は城郭ブームともいえる潮流の中で飛躍的に増えてたが、一方では高度成長期以降に「再建」されたRC構造の城郭建築物の多くは建築物としての耐用年数の限界を迎えてその存在が脅かされている状況にあるという。
 城郭建築物の復元、補修には、文化財保護法と建築基準法、消防法などの法規制により極めて困難性を伴うものであり、単なる地域のシンボルの存続問題として取り扱う事の難しさがあり、名古屋城の天守復元問題、あるいは被災した熊本城の復興に向けて一定の方向性も提示している。
 しかし同氏の記述が示しているように、文化財保護の重要性に関する論議とその財源問題に関する根本的な記述が少ないことは、現在の文化財全体が置かれている社会的基盤の脆弱性を物語っているという側面も感じられる。
 なお、巻末の「城郭復元。復興等一覧」はかなりの労作だが、北上市岩崎城(社会教育施設)は2016年7月現在で既に耐震不足により取り壊しとなっているように、細部には多少の遺漏があるのかも知れない。

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  32 城館調査の手引き
     中井 均 著/山川出版社/2016年刊行/1800円 (2016/10)  

 1993年に新人物往来社より刊行された文化財担当者の入門書を意識した 3 「城館調査ハンドブック」が中世城館のみを対象としているのに対して、本書ではオールカラーで近世城郭を含めた内容となり、読者層をひろく意識したこうした内容の書籍が刊行されるという城跡めぐりブーム到来をあらためて痛感するものである。
 城跡めぐり初心者から文化財担当者まで必読の書と帯に記されているものの、おそらく広く日本史そのものを含めた初心者にとっては、城館関係の各種専門用語説明が簡略に過ぎるきらいがあり、元来「城跡めぐり」が有しているはずの楽しさが伝わるかどうかについては疑問が残る。かといって文化財担当者という学芸員資格を有した専門職にとっては初歩の初歩過ぎるという側面もあると思われる。
 しかし素人のレベルにも各人の間で経験上の無視できない格差があることから、サイトや書籍などの情報を参考にして、独力である程度の数の城館跡を探訪しているような城館愛好家であれば自己の城館に関する認識の整理をする上で役立つことは間違いがなさそうである。

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  31 城巡礼 東京45ヵ所めぐり
     東京地図出版/2008年刊行/1300円 (2011/05)  

 多摩地区の一部の山城を除けばだれでも訪れることのできる城跡が掲載されてあり、情報の新しさ、周辺地図の収録など本書を手ずさえて初めて東京都内の城めぐりを行うに万人向きの便利な一冊です。城郭ブームに乗って出版されたもののようですが、オールカラーB6サイズコンパクト版全111頁という体裁を考えると些か消化不良も止むを得ないところかもしれません。惜しむらくは値段設定がやや高めのように感じられました。

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  30 意外と知らない!こんなにすごい「日本の城」(じっぴコンパクト)
     三浦正幸 監修 /鞍掛 伍郎 著/実業之日本社/2009年刊行/762円 (2010/05)  

 歴史ブーム、城郭ブームに乗って出版された書き下ろしの新書版ですが、肝心の城郭の解説部分で図版・写真の掲載が極めて少なく決して分かりやすい構成になっているとは言い難いものがあります。また恐らく建築史を専門とする監修者である三浦氏は名目だけのように思われ、上記執筆者の記述によるところが多いものと推定されます。
 こうした事情を反映してか、本能寺の変における滝川一益は上野着任後2ヶ月に過ぎず、後北条氏の攻勢に対抗できるだけの態勢を整える余裕などはなかった。そうした事情を斟酌することなく、「関東の諸侍に積極性が無かった」ので一益は旧領の伊勢へと逃亡したと断じています。
 また、行田市立郷土博物館は所謂模擬天守に近い存在であるにもかかわらず、「忍城天守としての機能をもつ御三階櫓が復元された」と記しています。そのほか「北条早雲」による小田原城奪取の際の逸話など、一般書とはいえ筆が滑ったような個所が散見される些か残念な一冊です。
※下記のような誤記および誤植が目立ち、廉価な新書版とはいえもう少し丁寧な編集ができないものかと考えさせられました。
65頁 本能寺の変当時の信濃川中島領主 森長可(×もり よしなり)⇒(○もり ながよし)
82頁 近世小田原の解体時期 ×1970年⇒○1870年
86頁 坂戸城主の×長尾政虎⇒○長尾政景
164頁 秀吉の弟・羽柴長秀⇒?羽柴秀長

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  29 「こんな城もあったんだ」(日本名城・奇城ガイド)
     本岡 勇一 著/TOブックス/2010年刊行/1400円 (2010/03)  

 日本各地に散在する250か所以上にも及ぶ城跡探訪入門の基本的資料ともいうべきもので、竹田城の雲海にそびえる石垣群のカバー、そして扉折り込みの珍しい雪景色の竹田城の画像も収録されています。勿論1城につき2頁見開きという平易な体裁を堅持し大変読みやすく、要約した歴史的経緯、見どころに加えて交通情報アクセス付きという親切さ。
 参考文献、概念図、縄張図等が明示されていない部分は残念ですが、何よりも城郭探訪を愛して止むことのない同氏の意気込みと労作の上梓に敬意を表します。

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  28 「知識ゼロからの日本の城入門」 
     小和田 哲夫 著/幻冬舎/2009年刊行/1300円 (2010/02)  

 姫路城を含む近世城郭22城を中心にした、正に入門者向けに相応しい基礎知識を分かりやすく解説した内容構成となっています。しかし販売価格を抑えるためか、肝心の姫路城の空撮パノラマ画像に明らかな見劣りが感じられます。また、そのほか後半の城郭を構成する縄張り、門、堀、橋、塀、土塁などの解説には平易を意識しすぎて雑になったという印象も拭えませんが、入門書としての性格を考慮すればやむを得ない事情なのかもしれません。
 なおあくまでも「奥付」を見る限りでは、著名な「小和田氏の著作」と表記されています。しかし参考文献一覧、編集体制など一瞥したところでは、恐らくは複数のライターによる共著のような印象があり、小和田氏はあくまでも「序文」のみを記した監修者的立場であるように思われます。

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  27 「都道府県別日本の名城ベスト10」 (新人物文庫)
     中井 均 編/高志書院/2009年刊行/667円 (2010/01)  

 「歴史読本2009年5月号」を元に再編集したもので、47都道府県別に日本全国の古城・名城が網羅されています。交通案内や概念図(縄張図)の掲載を欠くところ残念ですが、これを片手に全国を対象に城跡めぐりをするには誠にハンディでコストパフォーマンスの高い優れものといえましょう。
 史跡整備が為されていない戦国期の山城関係が相対的に評価が低いこと、「アクセス項目」の評価内容についても、やや首尾一貫しないところも散見されますが、あくまでもひとつの目安のようなものと理解すべきなのかも知れません。
 なお全くの余談ながら埼玉を軸とする管理人の場合、ベストテンに掲げられた10か所のうち2か所がサイト掲載から欠落しております。やはり、川越城と岩附城は掲載せねばと改めて強く反省を。

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  26 「中世の合戦と城郭」 
     峰岸純夫 著/高志書院/2009年刊行/2500円 (2009/07)  

 峰岸純夫氏による90年代から近年に至るまでの中世の合戦およびこれに関る城郭等に関する発表済みの論考集で、今回の刊行にあたり新たに補注が付され巻末には関連の深い引用資料が極めて詳細に掲載されています。今後シリーズ化が予定されている「高志書院選書」の創刊に相当するもの。
 武家社会萌芽期の清和源氏一族同士の「大蔵合戦の背景と経過」に始まり、鎌倉幕府滅亡へとつながる「元弘の乱」、南北朝時代初期の足利尊氏による関東支配体制(「薩埵山体制」)の確立過程、小山義政・若犬丸の乱、鎌倉府の事実上の消滅と関東の分割支配をもたらした「享徳の乱」、上野の戦国領主としての「長野氏の実像」、「真田氏の系譜」、「北条氏照の後北条政権における地位」などについて取り上げ、これをその関連する城郭との視点で述べるとともに、中世城郭跡等の文化財保護活動の経緯とその課題等についても明らかにしています。
 その一部において中世文書の掲載を含めて多少専門的な内容を含んでいるというような印象もありますが、関東中世史の詳細を理解する上では大変興味深い好著であるものと思料します。

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  25 「戦国時代の城 遺跡の年代を考える」 
     峰岸純夫・萩原三雄編著/高志書院/2009年刊行/2500円 (2009/07)  

 城郭の年代に関して縄張論と考古学的調査結果が大きく乖離する結果となった「杉山城問題」を一つの契機として行われた「シンポジウム 戦国の城と年代観-縄張り研究と考古学の方法論-」(2008年10月)における報告等を編纂したもの。
 西股総生氏の先鋭的軍事的城郭論、松岡進氏の広域的城郭論、中井均氏による杉山城豊織系陣城論、出土遺物による城郭の編年に関する論議などが収録され非常に示唆に富む内容となっていますが、とりわけ「杉山城」の年代推定に関しては、「山内上杉氏による築城で、概ね1530年代以前であろう」という新たな定説に対する縄張研究者側からの反論という側面を強く印象づけられる内容でもあります。

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  24 「ふくしま紀行 城と館 武者たちの舞台」(上下巻) 
     福島民報社/2007年刊行/各2500円 (2008/08)  

 史進どのよりの情報により購入したもの。地方小出版の流通ルートには乗らない直販スタイルで、アマゾン、楽天、ジュンク堂の何れも取り扱いなし。上下巻(各313ページ、オールカラー、B5版)で福島県内の合計130か所ほどの城館・陣屋などが掲載されています。平成15年3月から19年2月までの間福島民報に連載されていた記事を創刊115周年紀念事業として単行本化したもの。
 奥羽地方城館の専門家である鈴木啓氏らが監修し、地元新聞社ならではのニュースソースに基づき記述。
情報としての新しさに加えて、単なる城郭本にとどまることなくその歴史的背景などをふくめて多面的な角度からアプローチし、かつ遺構の現存状況もある程度詳述。福島民報社のサイトからメールで購入申込むと、送料込みで5300円(+ATM郵便振替80円)
 「日本城郭大系」の情報も大分古くなり、「福島の中世城館跡の報告書の復刻本」の高額な事情などに照らせば、福島の城館探訪をするには手軽で役立つ必読書の最右翼かとも。ただし縄張り図の掲載が殆どないのが欠点のひとつかとも。

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  23 「名城と合戦の日本史」 (新潮選書)
     小和田 哲男 著/新潮社/2007年刊行/1100円 (2008/06)  

 戦国期から西南戦争までの城を舞台にした50の合戦について記述され、「有田合戦と銀山城」(安芸武田氏の滅亡)「地獄嶽城の戦い」(大洲城の前身)「虎丸城・引田表の戦い」(長曽我部氏の四国制覇)「湊騒動の顛末」(出羽・津軽両安東氏の争い)など比較的ローカルなものを含めて略述されています。
 本書は「週刊名城をゆく」(2004-2005)として出版されたものを選書化するにあたり加筆訂正されたという執筆の経緯があり、また出版の営業上の理由からつけられたと思われる「名城」についての記述は期待されるほどには登場してこないので城郭本として期待した場合には肩透かしをされた印象も残ります。ほぼ同じ時期に刊行された同著者による「戦国の城」の方が城郭本としては遥かに充実しています。

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  22 「大阪城400年」 
     岡本 良一、渡辺 武ほか共著/大阪書籍/1982年刊行/950円 (2008/01)  

 豊臣秀吉が大坂城を築いてから400年に当たることを記念した、カルチャーセンターの代名詞ともなった朝日カルチャーセンターでの公演会での内容を編集収録したもの。 岡本良一、渡辺武の両氏、ルイス=フロイスが記した日本史翻訳者など当時の一流の研究者が名を連ねています。
 無論その当時から既に四半世紀が経過した現在では、必ずしも大阪城研究に関する最新の情報が掲載されているというわけではありません。しかし内容は石山本願寺時代に始まり、秀吉による大坂城の建設、秀吉の人物像、ヨーロッパ人から見た大坂、大坂の陣、徳川氏による大坂城再建、大坂の城下町の建設、近世大坂の経済・文化、近代の大坂と多岐にわたる豊富な内容は大坂城に対する大阪の人々大坂城に対する思いを伝えており、大坂城をより多面的に理解する上で大いに参考になります。 また、現存する建造物の詳細な歴史的経緯を始めとして米軍の過失により消失した紀州御殿、昭和初期に再建された天守の復興にいたる経緯等についても詳しく述べられています。

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  21 「大坂城のなぞ」 
     村川 行弘 著/学生社/2002年改訂新版刊行/2200円 (2007/12)  

 昭和44年に大坂城の石垣とその刻印の膨大かつ綿密な調査にかかわった筆者の旧著を改版にあたり一部改定したもの。雲をつかむような石垣の数量の計算、石垣に刻まれた刻印の持つ意味、西国諸大名に割り当てられた丁場と現実の普請の違い、謎の抜け穴の存在(⇒排水溝でもない用途不明の穴との結論)など文献史学の手法とは些か異なった考古学者の視点からの学術調査の妙味が随所に現れています。
 もちろん調査結果は現在の大坂城は徳川氏による元和から寛永年間の10年間の間に3回に分けて普請されたことが立証。同時に石山本願寺当時のものは地中深く埋まり到底その所在地を含む遺構の確認が困難であること、また秀吉時代の地表に残されている唯一の関連遺構が天守近くの金明水の井戸跡のみであったという徳川氏の徹底した改修工事(ほぼ新造に近い)の様子を明確に浮かび上がらせています。また、石垣の普請自体についても細かく観察していくと中には乱雑なものも散見されるという指摘は、推定100万個に及ぶ石垣の悉皆調査を実施した責任者ならではの見解かと思われます。
 石垣としての石材の多くが六甲山中から採掘された結果、現代に至るまでの土砂災害の直接的原因となっているとの指摘は興味深く、また近代以降の大坂城が辿った経緯なども詳しく記述されています。

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  20 「大坂城」(岩波新書) 
     岡本 良一 著/岩波書店/1970年刊行/150円 (2007/12)  

 石山本願寺時代に始まり、秀吉による大坂城築城および惣構に関わる記述、城下町の形成、大阪の陣、徳川氏による大坂城の再建、幕末から明治にかけての荒廃、昭和の天守復興、太平洋戦争による被害と時代を追って万遍なく解説されています。
 著者は大坂城研究者として著名であり、大坂城に関する論考・著作も多数出版されています。この新書版(青版)は出版されてからすでに40年近くの年月が経過しているため、「中井家の絵図」に対する史料としての評価など最新の研究成果等の現代的視点が反映されていないという問題は避けることはできません。しかしそうした個所を含めて昭和34年の有名な本丸の豊臣時代の石垣の発掘以降における大坂城研究史の側面をたどることができる好著でもあります。
 石山本願寺の推定地に関する論争の当事者としても著名ですが、現在では法円寺坂説に対して大阪城内説を主張したこの著者の説が有力視されているようです。また大坂城の石垣の数量が約40万個であるという推論も当時ならではの手法が窺われます。なお、巻末には本丸石垣の発掘に至るまでの略年表も付されています。

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  19 「大坂城」(歴史群像 名城シリーズ1) 
      小和田哲男、宮上 茂隆、松岡利郎、渡辺武、内田九州男 共著/
      学研/1994年刊行/1500円 (2007/12)  

 下記の著書をベースとしているものの城郭建築史の視点にとどまることなく、複数の専門家により様々な角度ら執筆されより一般向けの内容となっています。
 大阪城の前身とされる石山本願寺の所在地推定に関する記述、大坂冬の陣で活躍した真田丸出城に関する一連の記述、大坂冬夏両陣の両軍の細かい配備状況、復興天守再建時の状況とその経緯なども記述。また現地見学において、豊臣氏と徳川氏の大坂城をの相違を比較する場合にも役立つ主郭部分を重ね合わせた縄張図も収録された重宝な一冊です。
 このようにして17世紀初めにおける大坂城の規模が学術的に次第に判明してきますと、通説では冬の陣で10万人、夏の陣でもその半数が防備についたとされる点について別途新たな疑問も生じてきます。豊臣期の本丸の広さは最大でも約5万平方メートルほどの規模であることが推定されますが、仮に5万人の兵員を収容すると1m四方に1人というスペースしかないことから事実上身動きが取れないという事態が発生します。このため、その大半は予め旧二ノ丸などの城外を中心として守りを固めていたとして、本丸、二の丸の合計20万平方メートルのスペースに籠ることのできる人員については仮小屋などに詰め込んだとしても2万人前後が限度と推定されます。(土地に対する居住施設の面積割合を2割、1人当たりの居住スペースを2平方メートル(京間の畳1枚分)と想定)
 一方真田丸出城が「難波戦記」の記述どおりに100間四方の規模であるとすれば、京間では4万平方メートル前後の面積となることから、3千の兵を配備することは十分に可能であるという推測も成立します。

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  18 「大坂城-天下一の名城ー」(日本人はどのように建造物をつくってきたか) 
      宮上 茂隆 著/草思社/1984年刊行/1600円 (2007/12)  

 読者層を児童・生徒を想定して編集されていますが、フリガナがなければ一般向けに出版されたものといっても差支えない内容。豊臣秀吉が築いた大坂城とその後徳川氏により再建された大坂城の違いについて土木建築史の観点からその学術的研究成果を分かりやすく記述したもの。
 建築工学の部分に力点が置かれていることもあり、歴史的な背景については当時の通説を引用しています。このため、「武功夜話」等をベースにした「墨俣一夜城」、「武田騎馬隊」などの現在では史実としては余り評価されなくなった記述も散見されます。しかし、「江戸間」(約1.8メートル)と「京間」(1.97メートル)という建築規格の相違、屋根仕上げについては当時は檜皮葺(ひわだぶき)、柿葺(こけらぶき)の順で一般には瓦葺よりも格式の高い高級な仕様とされていたこと、耐水性のある南蛮漆喰の技法に関する解説など興味深い記述が多いことも注目されます。このため些か版年が古くなったとはいえ、その読みやすさという点も含めて未だにその価値を減じることのない著書であるといえます。
 なお、概ねこの内容をベースにして10年後に同じ著者により「歴史群像名城シリーズ1大坂城」(1994/学研)が刊行されています。

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  17 「土一揆と城の戦国を行く」-朝日選書ー 
      藤木 久志 著/吉川弘文館/2006年刊行/1300円 (2007/10)  

 本願寺門徒に関する考察、戦国期における「村の城」の存在の論証、飢饉の最中に公共的投資を行う有徳人の存在、後北条氏両国における百姓の退転、「山城停止令」に関する考察など多様な示唆に富んだ内容が記されています。反面一冊の著書として捉えた場合には、結果的にテーマが分散していることからやや読みづらさを感じる側面もあるように思われます。
 しかし膨大な引用史料、文献一覧が巻末に丁寧に集約されていること合わせて、中世における一揆像、戦国時代の郷村の実情を知るための入門書としては注目すべき著書のひとつであると考えられます。また、戦国期の村落の下層民の存在に、近世における被差別民の萌芽が見られることも興味深いものがあります。

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  16 「中世武士の城」-歴史文化ライブラリー 
      齊藤慎一 著/吉川弘文館/2006年刊行/1700円 (2007/10)  

 前著である「中世東国の領域と城館」(2002/吉川弘文館)のエッセンスをより一般向けに凝縮し、城館における宗教・信仰という要素を大きく膨らませた内容。引用した史料を丁寧かつ分かりやすく解説し説得力が感じられます。関東が戦国時代に突入する以前の15世紀前半までの武士の本拠とは、「来世における極楽浄土と現世利益の体現のための宗教施設を伴う地域の安穏を希求し保証する非軍事的空間であった」との見解は中世前期における城館の既成概念に少なからず影響を及ぼすものと思われます。
 鎌倉期から南北朝期の城は戦時における館を城郭化した臨時的な存在であり、また領主階層の土地の支配形態も戦国期のように一円支配ではないことを明示し、鎌倉時代末期の地頭屋敷と百姓屋敷の区分の曖昧さ、中世前期における武士の館の非軍事性に関する論及など興味深い指摘が多数。
 なお、浅羽氏、小代氏、吉見氏などの記述、伝足利基氏館を平一揆の中心人物のひとりである高坂氏関係のものとする推論など武蔵(埼玉)に関する記述も少なくなく、埼玉を中心に城館めぐりをする当サイト管理人にとっては大変ありがたい示唆に富んだ好著。

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  15 「日本史小百科 城郭」 
      西ヶ谷恭弘 著/東京堂出版/1988年刊行(1993年新装版)/2500円 (2007/09)  

 有史以前の稲城に始まり、弥生期の環濠集落、鬼の城などに代表される古代西日本に散見される神籠石、朝鮮式山城、都城、東北の城柵、方形館址から戦国の山城、近世の城郭に至るまでの一連の流れを概説したものでまさに小百科の表題に相応しい内容です。今日的な城郭研究の視点からは疑問視される部分があるものの、一般向けに書かれた20年前の城郭史の概説としての考え方を知る上では有用な一冊であると思われます。加えて幕末から明治初期にかけての近世城郭の古写真が豊富であることは大きな特徴のひとつといえます。また、巻末には日本城郭史年表、城郭関係参考図書一覧に加えて索引が付されるなど読者に対する便宜が考慮されています。
 しかし2段組みという文字の小ささに加えて、引用文献の読み下し及び出典を含めた説明不足気味の傾向みられる点にいささか難点が。また、悪党と称される階層の人々は何故畿内を中心とした個所に集中していたのか、平均的城番の人数をルイス・フロイスの「日本史」からそのまま引用していること、武州鉢形城を山城と言い切り、その比高差を15mとする根拠の曖昧さ、足弱を足軽と同一視するなどの諸点が疑問に思われます。これとは別に、桶狭間の合戦を奇襲とするのはこの時期の通説とされていたことから止む得ないとしても、本能寺、二条城に対する明智光秀の勝因を奇襲とするのは双方の兵力差という要素を無視した見解であるという印象が拭えません。また、天正4年を1596年とする個所、宇喜多秀家を直家と記すなどの誤植が些か目立つことが残念です。

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  14 「城破りの考古学」 
     藤木 久志 / 伊藤 正義 編著/吉川弘文館/2001年刊行/3800円 (2007/09)  

 越後の中世城郭の破城に始まり肥前名護屋城、島原城など戦国時代から近世初期にかけての人為的な城郭破壊の意味を主に考古学的見地から考察した16編に及ぶ論考集。城破り(しろわり)の儀礼作法、自焼没落は徹底抗戦を意味する、無人の居館(居城)は不吉であるという中世の観念の存在、郭内の竹木の伐採は占領した城館の繁栄の象徴の破壊であったなど非常に示唆に富んだ内容。また諸城破却令、山城停止令、元和の一国一城令などの広域的な城郭破壊の実情とその歴史的意義に対する論及も興味深いものがあります。
 論考集という形態をとっているため、部分的には主張の重複、執筆者による視点やニュアンスの違いが散見されますが、むしろ城破りという破壊行為が内包する諸要素を多面的に捉える結果となっています。

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  13 「もう一度学びたい日本の城」 
     中山良昭 著/西東社/2007年刊行/1400円 (2007/08)  

 いわゆるマニア向けに書かれたものではなく一般向けの読みやすく実用的な入門書。下記の「日本百名城」を底本にして、近世城郭の解説により比重を置いていることが特徴のひとつ。ただし、史実としての理解を第一義として読むことは些かの疑問も散見されます。
 しかし、その一方で城郭関係の出版物の編集に携わってきたという経歴を生かして、その魅力を伝え少しでも城郭ファンを増やしたいという熱意が伝わってきます。また出版物としてのその社会的影響を考慮し、前作では明らかに勇み足と思われる蜂須賀氏の出自と墨俣一夜城などの記述については逸話としての記述に改めるなどの姿勢も好感が持てます。
 基本的な城郭関連本、有名城郭サイトの紹介も付記されるとともに、口絵折込の「城郭年表」、巻末付録の「全国天守一覧(模擬、復元、現存を含む)」、「幕末期の大名と城・陣屋一覧」なども見学の際の目安になりそうです。ただし、代表的近世城郭約城に付された防御データの「城主」という項目の意味がどうしても分かりませぬ。

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  12 「日本百名城」(朝日文庫) 
     中山良昭 著/朝日新聞社/2004年刊行/640円 (2007/08)  

 近世城郭を中心に全国百か所の名城を紹介。その最大の特徴はその全てに簡潔な縄張図が付されていることに尽きます。なお強いて言えば距離の表示、比高差、標高などのデータ並びに縄張図の出典と現存遺構などが示されていると更に喜ばしいところです。文庫版でもあることから大変お買い得ではあります。
 ただし、江戸城の縄張図中の道頓堀は道灌堀の誤り。(著者の責任というよりは校正ミスと思われます)また古河公方と山内・扇谷両上杉氏が抗争を繰り広げた経緯、小田原城の惣構の成立時期、真田昌幸に関する逸話(死亡時期の誤りを含む)、蜂須賀氏の出自と墨俣一夜城などの記述については些かの疑問を感じます。

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  11 「名城の日本地図」(文春新書) 
     西ヶ谷恭弘・日 著/文藝春秋/2005年刊行/880円 (2007/07)  

 近世城郭の建造物、石垣を中心として100か所の名城を解説したもの。元和元年(1615)の一国一城令による城郭の破壊に始まり、その後の火災、明治5年(1872)の破却令などを経て多くの建造物としての近世城郭が消滅。そうしたなか、辛うじて現代にその姿を伝えられた名古屋城、広島城、岡山城など著名な城郭建築も空襲や戦後の失火により焼失。そして現代は築城400年となる節目に当たることから空前の城郭復元ブームであることを再認識させてくれます。
 巻末に城郭用語ミニ解説のおまけつきで、全体として記述内容並びに写真画像が比較的新しいということも特徴のひとつといえます。また一国一城令の例外として、島津藩では約120か所の麓(ふもと)・外城(とじょう)、仙台藩では21か所の要害、土佐藩では6か所の土居として事実上の支城が認められ、それぞれの広大な地域支配の拠点として機能していたとの内容は興味深い。
 欲をいえば現存する建造物・石垣などについて、「往時のもの」「復元物」「歴史的経緯を無視した模擬建造物」のいずれであるのかなどについて一貫した簡潔な記述が欲しいところ。

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  10 「日本の古城・名城 100の興亡史話」(学研M文庫) 
     鈴木 亨 著/学習研究社/2005年刊行/690円 (2007/07)  

 史実、俗説にかかわらず気軽に読み進むことのできる100か所の名城・古城のエピソードが満載されていますが、興味深い写真はあるものの「縄張り図」が一切掲載されていないことは残念の一語。
 また、疑問に思われる点としては上田氏が父祖伝来武州松山城主であったかのような記述のあること、すべての戦国大名が天下統一を企図していたとしていること(毛利氏、後北条氏の存在を無視しているようにも)、桶狭間合戦の前哨戦である丸根、鷲津砦の城兵の人数について、「改正後三河風土記」ではそれぞれ150名、520名と記述しているところを、具体的な根拠を示さず700名(「伊束法師物語」か)、400名(「武徳編年集成」か)と記すことに加え、僅か800平方メートル程の小さな丸根砦(主郭部分のみか?)に700名の城兵が籠城していたとの不可思議な記述も。(全く建物がないと仮定しても、1平方メートル当たり1人という超過密状態が発生)
 これ以外にも偽書としての可能性が高いとされる「武功夜話」を引用した「墨俣城」の記述、「北条五代記」の記述を考証することなく天正年間に拡張された惣構を含む大城郭が謙信、信玄の永禄年間に存在したかのような奇妙な記述も散見されるなどあくまで「物語」として読みすすむことがポイントのようです。
 なお初代古河公方である「足利成氏」を「あしかがなりうじ」とルビをつけていること、「長尾景春」を「長尾春景」と記していることなどの校正の粗雑さがやや目立つ印象が。加えて欲を言えば引用文献については史書・軍記物の区分にかかわらず出典を明示するか、さもなくば巻末に参考文献一覧くらいは示していただければと思う次第。

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  9 「戦国の城」(学研新書) 
     小和田 哲男 著/講談社/2007年刊行/780円 (2007/06)  

 学研による新書創刊6冊のうちの一冊で、一般向けに記された戦国時代の城郭の入門書ともいうべき内容。南北朝期の山城には土塁を築くという習慣がないとの見解の根拠が些かあいまいな印象も。また事例として示されている城郭のうち高天神城に篭城したとされる徳川方の兵力を2千人としていますが、郭の規模から推定する限りでは腰郭、帯郭、通路部分を除いた建物の建築可能な土地の広さは最大でも5千㎡程度と考えられます。すると建蔽率が5割と仮定しても、居住部分は武器・弾薬・食料・厩などを除くとすれば全体の約2割程度となるはずで、このため5千㎡×0.2=1千㎡の敷地に一人当たりの占有面積2㎡として最大限詰め込んだとしても平屋建ての場合には500人を収容するのが限度ではないかと思われます。また織豊政権側の兵農分離の実態についての断定的な表現に多少の違和感も感じられます。
 そうした瑣末な部分を別にすれば堀切、小口、馬出などの城郭専門用語、郭配置の類型、兵力の動員の実態なども丁寧に解説されており、「地味であるが戦国の城は奥深く、文句なく面白く、その魅力を描き出したい」との著者の試みがある程度成功しているようにも思われますので、入手しやすい新書版の入門書としては他に類書が少ないだけに貴重な存在と考えられます。

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 8 「戦国の城を歩く」(ちくまプリマーブックス)千田 嘉博 著  筑摩書房
                        2003年刊行 1200円(2006/05)

 戦国山城歩きの入門書で、10年前に刊行された前著の「城郭調査ハンドブック」(共著)がやや専門家を目指す人々を対象に書かれたものと比べると遥かに一般向けとしての印象が強くたいへん読みやすい内容として纏められている。
 越中の城生城、近江の観音寺城、安土城などを実例として、戦国期の山城の特徴について縄張り図などを掲載し分かり易くていねいに解説。とくに城生城の中心部の縄張りの記述は詳細でその城郭としての機能・目的を解き明かすくだりは秀逸。また、観音字城の夥しい郭郡の配置から戦国大名六角氏の権力構造の脆弱性を読み取る手法もまことに興味深い。安土城については頁数の関係からかやや物足りなさが残るものの、城郭の研究から信長の政治意図を解明するという基本姿勢があらためて新鮮。
 巻末の西欧の城郭の歴史との対比は、ともすると視野が狭くなりがちな中世城郭研究の学問としての位置づけをさりげなく提示。

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7 中世東国の領域と城館 齋藤 慎一 吉川弘文館 2002年刊行 9800円(2005/07)

 関東の南北朝期から戦国時代末までの時代における城館の機能と領域をテーマにした研究書。浅学非才の自分にとっては、完全に学術的な専門書ですので、当初は城館論を中心とした「縄張り」の部分だけでも拾い読みできればなどと思っていましたが、15世紀中頃に「居館」からより軍事的性格が色濃く反映する「要害」へと変化する過程、東国の「石積」についての考察、そして16世紀の「境目の城」「半手」と読み進むにつれて何とか途中で放り出すことなく最後まで目を通すことができました。とりわけ後半部分には、「清戸在番」や「坂戸小山の平山氏の所領での争議」などの古文書に関する考察が出てきたりしたので、自分の乏しい断片的な知識がやっとつながりを見せたことが確認できたりしたのが自分にとっての小さな収穫。

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6 城と城下町(文化財探訪クラブ) 石井進 監修 山川出版社 1999年刊行 1680円(2005/06)

 古代の城柵を始めとして古代末期から鎌倉期にかけての武士の館、東北地方の「館」(たて、たち)、北海道のチャシ、沖縄のグスク、そしてもちろん室町時代から戦国時代にかけての山城、近世大名の石垣のある城郭などについて適切で簡略に説明がなされています。また、小口の形態、石垣の構造、城門の種類、天守閣の形態と時代的推移などの解説も分かりやすく説明されています。
 一般的には、文化財としての城郭めぐりの入門編であると思われますが、埼玉の中世城館にしか感心を持たず土塁と空堀の世界に埋没し視野が狭くなりがちな人間ににとっては、大変ありがたい視野の広さの必要性を改めて指し示す内容となっています。
 城下町の発達についての解説、40ヶ所以上の城郭ガイド、全国の主な城跡の一覧、内容索引もついています。全12冊のシリーズとなっていますが、価格とボリュームがちょうど手ごろなので他の分野のものも現在揃えている最中。

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5 関東の城址を歩く 西野博道 著   さきたま出版会 2001年刊行 1800円(2005/05)

 関東の一都六県の比較的著名なある程度歴史的経緯の判明している城跡の探訪記。時折エッセイ風の記述も散見され、著者が城跡を探訪する動機や歴史観、人生観のような内容も顔をのぞかせている。一般に中世の関東地方は土塁・空堀を中心とした城跡が大部分を占めているが、下野の唐沢山城のような例外もあることを改めて気付かせてくれる。石碑のみの城跡、歴史の中に遺構が埋もれている城跡、復元された城跡、歴史的経緯に関係なく新たに建設された天守閣、それらに対する分け隔てのない筆者の暖かいまなざしが伝わってくる。比較的交通の利便性がよいところが多く、自分のこの夏向けの訪城計画の参考資料としては大いに役立ちそうに思えた。

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4 城が見た合戦史 二木謙一 監修   青春出版社 2002年刊行 700円(2005/05)

 「天下統一の野望をかけた城をめぐる攻防」という副題があり、冒頭に城の種類や縄張りなどが記されていて、これはなかなかという期待感を持たせてくれた。しかし、個別の城をめぐる合戦史の記述では余り特徴のない通史的な内容となり、「城」は脇役に押しやられ、よくありがちな合戦と武将が中心の展開となっていくに従って当初の期待が萎んでいった。それぞれの城郭の持つ縄張りの特徴や、合戦における実際的な役割が想定でもいいので示されていると城好きとしては非常に嬉しいのだが、この本も含めてなかなかそうした内容のものに遭遇できないでいる。推定でもよいのだがせめて、安芸郡山城の事例のように、縄張り図と合わせて攻防戦の軍勢の人員配置などが記されていると欣喜雀躍となるのだが...。
 もっとも戦国時代の合戦とは本来ローカルなものであり地域の郡村単位の陣取り合戦が中心で、「天下統一の野望」があったとしても、それは例の著名な3人の武将に限られると思われるが。

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3 城館調査ハンドブック 千田嘉博ほか 著   新人物往来社 1993年刊行 2000円(2004/11)

 中世城館の調査研究に携わる人向けの入門書として書かれていますが、自分のような「ただお城が好きだー」という一般の中世城郭愛好者でも十分に分かるような内容です。調査の手法としては①文献・絵図・地籍図からの調査 ②縄張りにる現地調査 ③発掘調査などがあるということで、近年においてその研究は進展したということです。
 我々一般の人間にとっては「①」の情報を潤沢に入手することは難しく「③」についても説明会、シンポジウムなどへの参加程度であり、結局の所②の手法が中心となるわけです。したがって縄張り図の描き方の項は大変興味深く読めます。
 この本が書かれた当時は、今ほどNET社会も進んでおらず、その情報もアナログの中心の時代でした。したがって、今では一般化している城館用語の説明や、城館跡と紛らわしい遺構などの解説にやや不満が残りますが、研究者としての基本的な視点が押さえてありますので、想像のみの記述に偏らないものになっています。
 値段が少々高いのが難点ですが、必読とは言わないもののほかに手ごろな類書が余りないので読んでみて損は無いものと思います。

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2 中世北武蔵の城 梅沢 太久夫 著   岩田書院 2003年刊行 12390円(2004/06)

 「北武蔵城郭フォーラム」のサイト主催者の著書。最新の埼玉の城址の研究資料集で研究者のみならず城跡散策愛好者にもおすめの内容です。ただし、価格はかなり高めであります。しかし築城タイプ等に関する学術論文をはじめとして、110箇所にもおよぶ城址の解説・実測縄張図・交通案内が記載。また巻末には埼玉県域に関係する合戦年表史・679箇所の城郭・館・屋敷リストが付いています。類書が少ないことから思い切って購入しましたが、まったく損はありませんでした。
 さて城跡の縄張り図や写真を見てるいると、どうしてこんなにワクワクしてくるのでしょうか。そこで気がついたことがひとつ。あくまでも自分の場合ですが、必ずどう防御したらという城側からの視点でこうした資料を見ていることに、ある日ふと気がついたのであります。  (2007/12/05 記述改訂)

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1 戦国の山城をゆく(集英社新書)  安部 龍太郎 著   集英社 2004年刊行 680円(2004/07)

 戦国時代後期、豊職政権によって滅ぼされた六角氏、朝倉氏、比叡山、紀州根来一揆、雑賀一揆等の中世の地方権力が依拠した山城跡を旅する紀行文集。朝倉攻めの理由のひとつに海外との交易ルートとその利権をめぐる争いのあったこと、雑賀衆や根来衆が一地方の国人勢力であったにもかかわらず大きな戦闘能力を有していたのは鉄砲・火薬などの買い入れも含めた海路の交易ルートを保有していたこと等の指摘は興味深いです。
 また、信長自身は決して尾張の弱小大名ではなく豊かな貿易港を支配下におさめ、その経済的な総合力の必然として桶狭間の勝利があるとの見解も肯けます。(昔から桶狭間の戦いが「奇略を用い、小よく大を制する」という典型的な事例として語られてきたことは常々疑問に思ってました。少なくとも当時の尾張国は経済力の点で豊かな濃尾平野と貿易港を抱えており、石高の点でも駿河・遠江・三河をあわせたものと大差はなかったと言われています。両者とも齋藤氏や武田氏、北条氏などの後方の押さえとするため、総動員できるわけではないけれども荷駄隊などの非戦闘力を除くとすると、せいぜい今川方1万5千人対織田方1万人ぐらいの格差であったはずであり「信長公記」の十数倍の格差の兵力というのは、この件に関してのみ作為的であり非常に疑わしいと指摘する人もいます。)
 以上の点で星5つ、戦国山城ファンとしてはもう少し詳しく山城の縄張りの様子を伝えて欲しいという気持ちからマイナス星一つという贅沢な要望。(ま、自分で見に行けばいいんだけど...出かける暇と金がないから本を読んでるってことですが...)-- 以上、アマゾンの自分のカスタマレビューから転載--

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