凸地名だけの館か
　小原田中学校の南隣、中央大橋北西の阿武隈川西岸に所在している。当該遺跡の時代区分に関しては縄文、奈良、平安期の遺跡とされ、縄文土器、須恵器などの遺物が発掘されている。(　⇒　「郡山氏埋蔵文化財分布調査報告１７」(「まほろん」より))阿武隈川沿いの低地でもあり、野毛館などと同様に口伝が絶えて「館」名だけが残った事例なのであろうか。
　なお、「角川日本地名大辞典第７巻」(福島県)の「小原田村」(近世)の項によれば、同村内には館跡が３か所存在し、西館(小原田館)は天正２年に須賀川の二階堂盛義方についた小原田壱岐守が築き(「安積郡誌」−※現存しているのは「安積郡誌抄」)、名倉館は名倉五郎左衛門尉(「小原田村大概帳」−いまのところ未詳、※名倉館の所在についても不明であるとされている)が、早水館は佐竹氏に仕えたという早水玄蕃が住した(「相生集」)とされている。むろん、これらの記録類は口伝などを集めた後世の江戸時代以降に編纂された地誌類であり、その史料としての信頼度は決して高いとはいえない。
　このように近世の小原田村については、その当時において３か所の城館跡が伝わっており、そのうちの早水館と西館(小原田館)の２か所に関しては、概ねその所在地が判明しているが、残りの名倉館については不明とされている模様であり、この鹿島館に至ってはすでに近世では口承さえも残されていなかったのかも知れない。

(注)　この城館名に関しては、郡山市内に「鹿島館」と呼称される遺跡が少なくとも４か所は存在しておりかなり紛らわしいことから、あくまでも便宜上から小原田の町名を冠したものに過ぎない。