義貞砦　中世城館　城跡　城址　埼玉　武蔵

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義貞砦（御所の内）

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　2005/02/11の日記　柏原城　　

おすすめ評価

訪城季節３　遺構状態１　探し易さ４　交通利便４　体力消耗５歴史経緯２　総合１９

所在地

埼玉県狭山市柏原城の越１５０４付近

歴史と沿革

■ 「新編武蔵風土記稿」の柏原村の砦跡の記述によれば、「上宿の南寄にあり、元弘3年左中将義貞武蔵野合戦の時構えし所なりと、今は皆陸田となれり、西より北へわたり、僅かに塁壁の形のこれり、畑中にも櫓臺の跡と称して、高さ五六尺、方七八間の地あり、又そり邊一町許の所を御所の内と唱るよし」として、新田義貞が北条氏の拠る鎌倉を攻める際に布陣した陣跡として伝えられていることを明らかにしている。
　しかし、その後段においては太平記の記述から察して鎌倉攻略までの日数を考慮すると、砦などを構えている暇はないはずであるといい、なにぶん数百年前のことであるので事実が取違えられて伝わった可能性が強く、「足利基氏の入間川陣営」ではないのかと推定している。そしてこの後段の記述は入間川御所の所在地に関する諸説の一つとなっていくのである。なお、「同稿」の柏原村の条の「砦跡之圖」にはあくまでも大まかな俯瞰図の挿絵ではあるが、柏原城の崖線に隣接するような形でクランク状の土塁を始めとする砦跡の遺構が描かれている。
　「市史」においても詳述されているように、仮に新田義貞が陣を構えるとすれば入間川左岸ではなく、より鎌倉に近い右岸に渡河した上で布陣するはずであり、また「太平記」の記述が正しいとするならば、元弘3年の５月８日に鎌倉幕府倒幕の兵を挙げた新田義貞は１８日には鎌倉を攻撃しており、とても砦などを築いている時間的余裕はないはずである。
こうしたことから、やはり「市史」の指摘するように、後年の南朝方の新田氏の動向を監視することを目的とした足利基氏の入間川在陣の際の出城として捉えるほうが理にかなっているようである。

確認できる遺構

無

構造的特徴および
周辺の地理的特徴

■入間川左岸沿いの柏原城の南西500ｍ付近の洪積台地の崖線に面し、市立柏原小学校の北側あたり「御所の内」の小名が残るあたりと想定されている。

参考資料、古文書、
記録

「中世北武蔵の城」（梅沢太久夫　著　2003/岩田書院刊)
「埼玉県史　通史編２中世」（1988年/埼玉県編集発行）
「埼玉県史　資料編中世4記録2」(1986年/埼玉県編集発行)
「狭山の散歩道--歴史と風物」（広沢謙一　著　1975年/21世紀書房）
「狭山史談第５号」（埼玉郷土文化狭山支部編集発行）
「入間川町誌」（1960年/入間川町誌刊行委員会）
「狭山市史　通史編Ⅰ」（1996年/狭山市編集発行）
「狭山市史　中世資料編」（1982/狭山市編集発行）
「仏像がよくわかる本」（1998年/瓜生中著/ＰＨＰ文庫）「民間信仰辞典」（1980年/桜井徳太郎編/東京堂出版）
「地形で読みとく合戦史」（2003年/谷口研語著/ＰＨＰ新書）　　

文化財指定

無

訪城年月日

2005/02/11

訪城の記録

（　2005/02/11　）
■伝承のみで記録もなければ、遺構もない。あるのは地名のみ
　「埼玉の中世城館跡」などには場所だけが大まかに記載されているものの、柏原城の南西500ｍほどの地点あたりで新田義貞の陣城のような遺構があったらしいというだけの伝承が頼り。ぐるっと一周ほど歩き回りましたが当然これといった成果もなく、農道の脇にあった享保の時期の庚申塔と、とても判読できない石碑・板碑の一部各一点ずつを歴史的遺産として写真に収めただけで訪城を終了しました。
　この場所も柏原城と同様に入間川の右岸の台地上にあり旧入間宿方面は目前に位置していますので野戦の地形としては最適なのかもしれません。しかし、「新編武蔵風土記稿」にも記している通り、義貞たちは短期間で鎌倉幕府を滅ぼしているわけなので、こんな所にのんびりと陣城んどを築いている余裕はないわけです。「御所の内」という地名が残ることから、もう少し後の時代の初代鎌倉公方足利基氏の入間川在陣の際の出城ような遺構であった可能性の方が高いようです。なお、義貞砦という呼称は「新編武蔵風土記稿」の柏原村の「砦跡之圖」の挿絵に、「義貞砦アト」と記載されていることによるもののようです。

Ｂｅｓｔ　Ｓｈｏｔ？

　右側の石造物が天保年間の馬頭観世音のようです。本来はもう一体あったようですが、現在は板碑の破片と仲良く同居生活を送っています。また、板碑の方はご覧の通りの一部分しかなく結局判然としませんでした。馬頭観音はサンスクリット語でハヤグリーヴァとよばれ「馬の頭を持つ者」という意味の六観音、八大明王の一つ。馬頭大士。馬頭明王とも。馬が草を貪るように人々の煩悩を食い尽くして畜生道からの救済を行うとされ頭上に馬頭を戴いているのが特徴です。しかし民間信仰としては馬の守護神として拡がっていきました。したがって競馬場にも設置されているとのことです(^^;
　(　2005/02/11　撮影　晴　)

交通アクセス

・県道２６０号線と２６１号線が交差する柏原交差点の東側付近。西武バス坂上停留所から徒歩１分。MapFan Web の案内図です　

（　2005/02/11　撮影　）

■享保13年建立の「六臂の青面金剛像」の庚申塔で、お供え物の様子から現在でも地元の方の信仰を集めているようです。以前は200ｍほど南の上宿養蚕農協脇の道端にあったものが移転したようです。なお、「市史の中世資料編」によれば、この御所の内の地から戦前に大量の人骨が出土し、この庚申塔が以前立てられていたときの場所に下に埋葬したという話があり、「関八州古戦録」の記述から、上杉氏と後北条氏の戦いによるものとであることを想定しています。　（　これだけの事を調べるのに2時間かかりました(^^;　）
「庚申信仰」は干支の「庚申」を基にしており、中国の道教の影響を受けており、元々は平安貴族の年中行事のようなものでした。本来は長命厄病除けの信仰であり、その後陰陽道、仏教、神道と結びつき、江戸時代には庶民の間で庚申講として流行した民間信仰であるということです。
　庚申の夜に行われた庚申待を３年続けた証に庚申塔をつくり、さらに塚の上に庚申塔を立てた庚申塚もつくられました。　庚申の崇拝対象は「青面金剛やサルタビコ」を本尊としていますが、庚申待では真言や般若心経を唱えたあと、宴会と歓談に及び徹夜をするという娯楽性の面も強かったようです。（「民間信仰辞典」桜井徳太郎編/1980年/東京堂出版より）

■遺構が確認されていたとされるあたりの場所は大部分がこのような畑と一部が住宅地となっています。たぶんこの辺りが、遺構であったとされる場所の東側だと思いますが。
　なお、「市史通史編」に掲載されている「入間川御所伝承地の位置図」のうち、「御所の内」の表示位置が現実の位置よりも多少北側にずれているようです。「新編武蔵風土記稿」の柏原村の「砦跡之圖」にあるとおり城山砦（柏原城）の南西500ｍほどの地点が正しいようです。（このことに確信を持つまで半日が．．．）

■信号の名称も分かりやすい「柏原」の二差路。県道260号線と261号線が合流しているこの場所付近も、遺構の推定地の西端部分らしいのですが。

■畑と道路の段差が気にはなりますが、それ以上のことは．．．．．(^^;


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