柏原城　柏原砦　城山砦　上杉城　中世城館　城跡　城址　埼玉　武蔵

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柏原城（城山砦）

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　2005/02/11の日記　　　

おすすめ評価

訪城季節３　遺構状態８　探し易さ４　交通利便５　体力消耗５歴史経緯４　総合２９

所在地

埼玉県狭山市柏原上宿城の越２３４６-２

歴史と沿革

■城の呼称について
　この城の呼称については大体４種類ぐらいあるようで、登場する文献によって異なっている。まず「柏原城」については「埼玉の中世城館跡」などの城郭研究関係の資料に見られる呼称である。次に城山砦は「狭山市史」などの狭山市の郷土資料関係に見られる呼称で、市の設置した説明版にはこの呼称が使用されている。更に「上杉城」という呼称は「新編武蔵風土記稿」の「砦跡」の本文に表記され、「同稿」の挿絵には「砦跡の圖　上杉砦跡」と書かれており、砦か城かという表記に拘らなければ以上の３種類ということになる。
■その歴史
　さて「狭山市史」に従って、歴史の古い順にこの城の経緯をたどっていくと、まず当地出身の柏原太郎の館跡であったことが想定されている。柏原太郎は「吾妻鏡」の文治５年（1189年）７月１９日の記述に奥州藤原氏の攻略に当たり畠山重忠に従った五騎の一人であり、「市史」は重忠の側近の武将として想定し、二俣川の合戦で重忠と共に討死をした可能性を示唆している。
　次に「市史中世資料編」によれば、南北朝期に新田氏などの南朝方を抑えるために、鎌倉公方の足利基氏が文和２年（1353年）から９年余りの間、入間川在陣したときの出城であろうという説を展開し、更に明応５年（1496年）に山内顕定が扇谷上杉朝良の河越城を攻撃したとき、山内方に味方した古河公方の足利成氏の子政氏が着陣したという説もあるようである。（　「入間郡誌」　）更に、呼称の謂れの一つにもなっている天文14年９月２６日から半年近くの間後北条氏との戦いのために上杉憲政が布陣したという記録も残されている。（　「関八州古戦録」　）
　これらのことから、「市史」は当初柏原氏が鎌倉期の武士の館として築いたものをその時代の必要性に応じて改修し、最終的には後北条氏の時代北条氏照の滝山領の出城として大幅な拡張改修がなされていったものと見ている。

確認できる遺構

土塁、空掘、出枡土塁、主郭、二の郭、三の郭、坂小口

構造的特徴および
周辺の地理的特徴

■入間川左岸の洪積台地が「くの字型」に張出した比高約10ｍの崖線状に３つの郭が直線的に並ぶ形式となっている。また、二の郭については「市史」ではその規模や防御から推察して馬出との推定もなされている。
　城跡全体の広さについては、資料などにより大きく異なっておりその原因が掴めない。ただ最新の情報である狭山市のＨＰの文化財の城山砦の解説では全体の面積を7000㎡、本郭の広さを3500㎡（たぶん土塁部分も含めた数値）としているので、自分の歩測と比較してこれが一番正しそうな数値であると思われる。参考までに「狭山市史」では全体の面積を３ヘクタール、本郭600㎡としているが、これはどう考えても誤りのような気がする。また、「市のＨＰ」も「市史」も同じスケールの略図を使用しているが、全体の面積を概算してみると2000㎡ぐらいにしかならないので、たぶんスケール自体が誤っている可能性があると思われる

参考資料、古文書、
記録

「中世北武蔵の城」（梅沢太久夫　著　2003/岩田書院刊)
「埼玉県史　通史編２中世」（1988年/埼玉県編集発行）
「埼玉県史　資料編中世4記録2」(1986年/埼玉県編集発行)
「狭山の散歩道--歴史と風物」（広沢謙一　著　1975年/21世紀書房）
「狭山史談第５号」（埼玉郷土文化狭山支部編集発行）
「入間川町誌」（1960年/入間川町誌刊行委員会）
「狭山市史　通史編Ⅰ」（1996年/狭山市編集発行）
「狭山市史　中世資料編」（1982/狭山市編集発行）　　　

文化財指定

１９６９年１０月１日指定　埼玉県選定重要遺跡、１９７３年３月１日指定　狭山市記念物　史跡

訪城年月日

2005/02/11

訪城の記録

（　2005/02/11　）
■土地勘があるというのは気が楽で
　所沢方面よりも多少は土地勘もあり、大体の所在地は把握していたので気楽な往路です。目が悪くなってきたので地理不案内の場所に行くのはそれはもう大変なことなので。さて、八瀬大橋を渡り、入間川沿い走る県道260号線を南西方向に進んでいくと「城ノ越」という城跡の所在を示唆する地名のある場所を過ぎ、もうそろそろ入間川の右岸に城跡の木立が見えるはずだなどど思っているうちに、明らかにそれとわかるこんもりとした林が畑の奥のほうに見つかりました。もう一本入間川に近いニュータウンの住宅のほうからアプローチすることもできますが、駐車場所の関係で迷惑にならないのは自分が駐車した高台の畑の中の農道のほうだと思います。ちょうど城跡のある場所のところは３台ぐらいは駐車しても大丈夫な空間もあります。だいいち高台の畑のほうは車自体も殆ど通行しませんし近所に人家も殆どありません。しかし、高台から一歩下に降りれば西武系のデベロッパーが開発したニュータウンの住宅が広がっています。柏原城はこうした入間川沿いの洪積台地の先端に位置して対岸に睨みを利かしています。また、旧鎌倉街道の上道の近くを並行して走る枝道がすぐ南西側を通過しているとのことです。

■遺構自体は小規模なので特徴を掴みやすい
　さて、城跡は大きく分けて北西の畑側から見て左から本郭、二の郭、三の郭と入間川摩の洪積台地の崖線に沿って連郭形式に並んでいます。ただし三の郭は見た限りでは土塁も残されていないために、郭であるとは判断しにくい状態となっています。しかし乏しい経験上から何となく三の郭のような感じがしたのですが、そのとき所持していた資料には掲載されていなかったために見過ごしてしまいました。この日の帰途に狭山市の図書館に立ち寄り資料を閲覧してその事実がわかったので、再度翌日の夕方写真の撮影に出向くこととなりました。素人の感も馬鹿にはできないものだと少しだけ自分自身に感心を(^^)
　また、この場所は
①戦国時代の後北条氏の土塁による城跡の特徴をよく伝えている
②比較的場所が分かりやすい
③すぐ近くに数台の車を止める場所がある
④小規模なので全体像が掴みやすい
　など、埼玉の中世城跡めぐりを始める際のモデルケースになりそうな構成内容があります。
　二の郭のほうも土塁状のものが残されているのは稲荷社の洞のある辺りだけで、三の郭との間の空堀もだいぶ埋まってしまっているように見えます。あとで調べてみたところ、この稲荷社のところの盛土については「新編武蔵風土記稿」の記述では「古塚」とされていることが分かりました。本郭と二の郭の間の南に下る通路は竪堀であったと想定されています。確かに通路から見上げる両側の郭はなかなか見ごたえがあります。また、この通路を登っていくと正面に本郭から南東側に張り出した土塁があり、この竪堀を登ってきた寄せ手は同時に三方からの攻撃を受ける構造となっているようです。

■坂小口と小口防御の工夫
　本郭への小口は先ほどのところから右に曲がり坂小口状となっています。小口自体は喰い違いとはなっていないものの、ここでも竪堀の場合と同様に三方からの攻撃を受けることとなります。本郭はの広さは「市史」によると約600㎡ほど広さであり入間川沿いの部分を除いて高さ３メートル前後ぐらいの土塁がしっかりと残されています。なお、「市史」では本郭全体を土塁がめぐっていた可能性や、南端部分には小さな張り出し部分があることから物見櫓などの存在を示唆しています。確かにこの場所からは現在でも木の枝の間から対岸の旧入間宿の方面がよく見通すことができます。

■出枡形状の土塁と屏風折状の空堀、そして不法投棄された各種のゴミ
主郭の土塁と空堀は小規模な出枡形、前述の小口部分の張り出し、屏風折状の形状の工夫などの特徴から、後北条氏時代の出城のとしての特徴を残しているようです。空堀の規模についても外側で土塁の高さを含めれば4ｍ近いところもあり予想以上に大きく意外な感じがしました。
　しかし、これでゴミが捨てられていなければ本当に言うことはないのですが(^^;　どう見てもついでに捨てたというよりも、わざわざ捨てに来たというような粗大ゴミが目立ちました。諸般の事情により行政側でも余り手をかけられないのかどうかもどかしい感じがします。すでに実施しているかもしれませんが、年に４回ぐらいはボランティアを募って空堀の清掃をしても良いのでは。運営等に手が掛かることとは思いますが、そうすることで文化財としての認識も少しずつ高まっていくかもしれませんし。市民ではありませんが、募集があれば遠くないのですぐにでも喜んで飛んで行きますけど。「狭山市史通史編Ⅰ」の300頁には「城山砦　柏原にある城山砦は、市内唯一の中世城郭である。」と記され、記念物史跡として市の文化財などにも指定されているのですから。

Ｂｅｓｔ　Ｓｈｏｔ？

　柏原城遠景を北西の畑側から撮影。
　向かって右側の木がまばらな方が二の郭、三の郭で、こんもりと繁って見えるのが本郭。
　２月のこの時期でも空堀は樹木の繁殖で余り見やすくはありませんので、夏場の訪城は避けるほうが賢明かと。
　(　2005/02/11　撮影　晴　)

交通アクセス

・西武バス城山砦跡入口下車徒歩３分。MapFan Web の案内図です

（　2005/02/11　撮影　）

■二の郭に近い部分の本郭の空堀に沿った土塁。後に設置された農道も城跡の遺構の折に沿っているのでこのような道になっている。「新編武蔵風土記稿」の柏原村の条に「砦跡之圖」として掲載されているものと現在の遺構はそれほど大きく変わっていないようです。

■黒っぽく写っている所が本郭の空堀で左側は本郭の土塁、右側は道路沿いにある低い土塁。

■北東部の空堀が大きく東に折れたあたりで、この左側は崖になっています。

■本郭北西部の空堀の外側には空堀に沿って高さ1.5ｍ前後の低い土塁が続いています。
　左上にある先頭の写真に写っている道路の先端のあたりから撮影。

■二の郭の近くに所在する稲荷社。「新編武蔵風土記稿」では「鷲の宮稲荷」と記されており、土の盛り上がりを古塚と記しています。また「同稿」によれば、「往時土民鍬もてこれを穿ちしに、太刀或は甲冑の鐵具などの朽たるもの出と云、然るにその者忽ち祟りをうけし故に、再びものと如く埋めしといえり」という言い伝えもあるそうな．．．．(^^;

■二の郭　（　手前側　）　から見た本郭の小口部分ですが、デジカメでは上手く表現できていませんが、この先は下り坂になっているので土橋部分から小口の土塁を見上げると結構高く見えます。

■南東側のニュータウンから見た本郭でガードレールの切れ目から上り口が見えています。比高10ｍといわれていますが、土塁の高さを加えると13ｍぐらいになります。
　崖線の直下には小さな水路がありますが、「新編武蔵風土記稿」の記述によれば「古は城下を入間川流れしよし」とあり、それが事実であるとするならばこちら側からの攻略はかなり難しいことになります。

■「狭山市史」が推定している本郭　（　左側　）　と二の郭の間にある竪堀で、これを下っていくとすぐに崖下のニュータウンの住宅があります。寄手はこの竪堀を登ってくると両側の郭と正面の張り出した土塁の三方から攻撃を受けるようになっています。

■本郭側から見た小口部分。小口の土塁の高さと、坂小口となっているため二の郭との間の土橋部分から見上げると５ｍ近くの高さがあり城郭自体は小規模ですが、これで門があればなかなか攻めづらそうな感じがします。

■本郭内から見た北西側の高さ３ｍほどの土塁。日没前の写真なので色調に難点がありますが、土塁自体としては日中の場合よりもしっかり撮れてました。

■本郭の北西側の土塁上の道。右側が空堀で、左側が本郭となっていて実際に歩いてみると、複雑な折が付けられていることを体感できます。

■本郭北西側の幾つもの折が見られる空堀と土塁。
　所々に白く見えるのは弁当の食べかすなどのゴミです。

■二の郭手前にある大木の根元に立てられている説明不要の尤もな内容の注意書。
　画像クリックで唯一の狭山市の設置した詳しい説明版の画像へ変わります。

■本郭と二の郭の間の場所から本郭北西部の空堀を撮影しましたが、どうして肉眼の光景とこうも異なるのでしょうか。
　手前の部分の深さは現在２ｍほどですが、奥に進むにしたがって土塁の高ささも加わり次第に深くなる様子は全く写ってはいません。

■本郭の小口部分の土塁は、一部が二の郭側の南西に向かって10ｍほど突出して、横矢がかかるように工夫され小口部分の防御を強化している。
　しかしこの手前部分の空堀は幅も半分ぐらいに縮小され深さも現在は２ｍを欠く。しかしその分小口手前から見上げる土塁は実際の高さよりも、かなり大きく見えなかなか威圧感がある。

■「市史」によれば、三の郭の北側　（　写真では道路右側　）　には長さ56ｍ、幅1.5ｍほどの堀状遺構があるとのことですが、殆ど埋め立てられていて全く分かりませんでした。
　また、かつては本郭と同様の堀と土塁が存在したと推定しています。

■高く見えるのが三の郭で手前の部分が二の郭との間の空堀跡ですが、かなり埋まってしまっいるようです。

■三の郭。500㎡ほどの崖線に沿って細長い形状をしていますが、西側に行くほど幅が狭くなっています。正面に鷲の宮稲荷の鳥居が見えます。


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