多門氏館　鶴馬館　中世城館　城跡　城址　埼玉　武蔵

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	多門氏館(鶴馬館)
関連ページのリンク	2004/12/19の日記　　2004/12/20の日記　鶴馬城
所在地	埼玉県富士見市鶴馬宿2041-2（住居表示では富士見市諏訪2-3付近）
歴史と沿革	■「新編武蔵風土記稿」の記述によれぱ、「屋敷蹟、巽の方にあり、六、七段許の地にて、四方に堀の蹟残れり、中古の地頭多門平次郎が居跡なりと云」とされ、「富士見市史　資料編２考古」などでは、徳川家の知行400石の旗本多門氏の陣屋で近世初頭の館跡とされてきたようである。 ■ しかしその後、「富士見市史　通史編　上」の記述によると後北条氏の有力家臣松山城主上田氏の一族、小机衆上田左近を館の創建者として推定し、「鶴馬館」との呼称を与えている。　その理由として　①本来の館の規模は水路の位置や道路の状況から見て現存する遺構の３倍以上の規模であった可能性があり、僅か４００石取の多門氏３代の１００年間でこの規模の館を築くということは疑問である。　②「小田原衆所領役帳」によれば、上田左近は鶴馬村150貫文、難波田村で120貫文、水子村などを合わせて477貫962文を領しており、鶴馬村の記述が最初にあることから領主の拠点を意味するものであろう。　③地理的に見てこの一帯を支配するならば、水子と難波田への道の交差するこの地に館を置くことが妥当であろうとしている。　つまり、後北条氏の家臣である上田氏の館を後北条氏の滅亡により、徳川氏の旗本である多門氏が承継したという図式である。 ■中世の城館跡を近世の陣屋とした事例は、坂戸市の大穴城（本田氏陣屋）、大法寺館（多田氏陣屋）、東松山市の高坂氏館（加賀爪氏陣屋）など多数の事例が確認されている。　なお、旧後北条氏の地域的な拠点での中堅クラスの旗本による陣屋支配の時代は、徳川氏の関東入府以降約１００年ほど続くこととなる。しかし１８世紀の末頃から、地方の政治の安定化と江戸城とその城下町の整備がすすみ、それらの旗本は江戸屋敷に転居していくこととなり、所謂旗本屋敷を形成していくこととなる。
確認できる遺構	土塁、空掘
構造的特徴および地理的特徴	■本郭の規模は北西から南東方向に約60ｍ、北東から南西方向へ90ｍほどの長方形。北東部分に台形状の「鬼門郭」（呼称は「富士見市史」による）と呼ばれる小郭があり本郭を囲んでいる。 ■館は三角形の低い台地上に位置し北側と南側をほぼ東西に水路により仕切られており、「富士見市史」ではこの一帯を館跡として推定している。　また、鶴馬城と呼ばれる富士見台中学校のある城館跡は南西方向に直線にして僅か200ｍ程度の近さである。
参考資料、古文書、記録	「中世北武蔵の城」（梅沢太久夫　著　2003/岩田書院刊）「富士見市史　通史編　上」(1994年　富士見市教育委員会/編集・富士見市/発行) 「富士見市史　資料編２考古」(1986年　富士見市教育委員会/編集・富士見市/発行)発掘当時の記録、多門氏についての記述が詳しい。「郷土ふじみ第２号」(1972年　富士見市郷土史同好会/編集・発行) 「富士見風土記」(1980年　富士見市教育委員会/編集・発行)
文化財指定	無
訪城年月日	2004/12/19

訪城の記録

（　2004/12/19　）
■多門と書いて「おかど」と読む
　この辺は仕事で幾度となく訪れているもので、大体の場所は分かるのですが本当にこんな場所に中世城館跡があったのかいなって......あれっ、あった(^^;
　コンクリートの擁壁で歩道と区分されているものの、どう見たって城館跡。北側の住宅側の遺構の状態が一番良好で、北側と東側には二重の土塁が歴然として残っている様に見えました。館跡は周囲の宅地部分よりもだいたい3メートルから4メートルほど高くなっており、館の中は全体として平坦ですが、幾分内側の土塁の高まりが確認できるようです。
　しかし、圧巻は、なんと言っても北東側に残る鬼門郭との間の空堀です。最も深いところで深さ2.5メートルは優に、幅は上部で3間以上もありそうな規模。こんなに住宅地に隣接しているのに、しっかりと当時の状態を今日に伝えていたことに感激しました。館跡からは北側の水田地帯を一望でき、南北を東西に走る水路に挟まれた台地の先端に位置するというなかなかの好条件。
　これで、ゴミさえ投棄されていなければ......さびた自転車に、旧くなった正月飾りに、飲み物の容器に、壊れた電化製品に......おまけに物置代わりになっているような.......これは残念で。
　地権者の方が清掃されているのでしょうか、空堀以外の部分は大変きれいな状態でまったく頭が下がる思いです。ただ、住宅地の中といっても良いような場所にあり、相続などが発生して保存していくことが困難になる前に具体的な保存対策が進めばよいのですが。

（　2004/12/23　）
■宿題を探しに
　前回は周辺の部分を全く確認していなかったので、ほかの富士見市内の城館跡めぐりのついでにコースに組み込んでの再訪。「いや～来てみてよかった」というのが率直な感想。必ずしも、当時のものかどうか分かりませんけれども、２郭と推定されている南東側の畑部分にも土塁のように見える遺構を目にすることができましたので。

Ｂｅｓｔ　Ｓｈｏｔ？

　「富士見市史」によると鬼門郭と呼ばれる館の東北に当たる出郭付近。この辺りから見ていると想像がつきにくいのですけど、土塁の向こう側の本郭との間の空堀が、落ちたら怪我をしそうなほどになかなかの規模で、その光景の意外さに暫し感嘆．．．．．。
　(　2004/12/19　撮影　曇　)

交通アクセス

・大きな目印は富士見市立図書館の信号から東南東へ300ｍ、市の給食センターのほぼ筋向い、「おかど氏館バス停留所」の前なので分かりやすいはずです。

（　2004/12/19　撮影　）

■多門氏について
　多門氏は三河国額田郡大門村の出身で当初大門と称し後に多門と改めたという。天承１９年（1591年）に多門平次郎成正が鶴馬村に200石を拝領し、その子正勝は大阪の陣に供奉し加増により400石となる。さらに正勝の子正景は加増により650石となり、元禄10年（1697年）間での106年間鶴馬村の領主として３代に渡り居住していた。
　多門氏の転出後は河越藩の所領となり、館を廃して郷倉を設置した。このため蔵屋敷との呼び名が残るという。館の南側に所在する浄円寺には成正の位牌などが残る。（「富士見市史」より）
■写真は、本郭から見た本郭へ続く堀底道。

■右側の写真が左側からの堀底道から続く本郭で、ご覧の通り大変きれいに清掃が行き届いており、館跡の様子が分かりやすく非常にありがたいことである。内側から見ても30センチから50センチ程度の土塁の高まりが確認できる。

■東側の市道に通じる館への道から空堀と二重土塁を撮影。この辺りは内側の土塁を除いて遺構がやや分かりにくくなっている。

■館の本郭、南東の角付近でこの部分は空堀と二重土塁が良く遺されている。しかし、ここから南西にかけての部分は遺構の確認が難しい。

■鬼門郭といわれる辺り。この写真の手前の部分は暗渠となっている幅1間ほどの水路を挟んで住宅地がびっしりと建てられている。

■1980年の発掘調査によれば、このあたりの空堀は箱薬研堀の形状であり、深さ４メートルとの記述もあるようです。
　現状で計測した所では堆積物があるため堀底から土塁の上面まで約2.5ｍ程度でしたが、低台地先端に所在する館の空堀規模としては、それでもかなりの深さを保っていると思います。
　また、堀の上面での堀幅はどう見ても最大で３間以上４間近くあるように見えますが。

■先ほどの空堀を角度を変えて撮影。真横から両側の土塁の斜面を入れた構図を試みたのですが、樹木などの関係で撮影できませんでした。

（　2004/12/23　撮影　）

■右側の水路に平行している二郭と推定される辺りに見られる畑に遺された土塁の名残と思われるもの。
　高さ約60㎝から80cm、延長35ｍ程度で途中で消滅している。

■左の写真の土塁は90度曲がり、やや登り勾配で北の方角に向かい主郭の土塁に繋がっているらしい。
　こちらの方は高さ約80cmから1ｍ、延長40ｍ程度。

■南側の２郭部分から見た館の主郭遠景。土塁の関係で２ｍほどの比高差が見られる。

■先ほどの土塁と見られる遺構を近くから撮影。

■大手口と推定されている南東側の細道から主郭方向を望む。
　両側の道の端にも土塁のような高まりがあるようにも見受けられるますが、それほどはっきりしない感じですので多分気のせいでしょう。

■北東側の市道から見た館跡。消費者金融の広告看板がずらりと並んでいるのはご愛嬌で.......


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