（　2006/11/18　）
凸紛らわしい桑畑
　徳川家の旗本岡部氏の近世初期の陣屋跡と伝わる曹洞宗慶徳寺境内の北側には、以前は桑畑であったと思われる農地は見方によっては郭跡のようにも受け取れる地形を形成しています。　桑畑などの排水の便宜を図るにしては大げさな地形の改変かと思われ、また丘陵の最高地点に所在しているので、これらの独特な地形の改変は排水の問題では無いように思われます。　加えて東側には「畑の根切り」にしては、余りにも大げさな深さ２ｍほどの全く古さを感じさせない堀跡状の地形も見受けられたりして．．
　しかし、全体としてはどうも城館関連遺構としては何処と無く違和感のあるような印象も拭えません。　具体例を挙げるなら、工事現場の残土を積み上げて整地したような観もなくは無いような．．しかし、道幅などが狭いため軽トラックは別としても、大型車での搬入は困難な地理的条件であることも事実なので余計にその判断が難しく．．

■１■南側の農道から撮影
　左側は篠竹が密生し比高差１０ｍ以上の深い谷津を形成しています。岡部氏陣屋と推定されている慶徳寺の５０ｍ程度しか離れていないすぐ北西側の個所なので、寺院或いは陣屋跡と何らかの関連があるのかとも思いたくなりますが、せいぜい数十年くらいの経過年数のようにしか見えない一連の地形変更なので些か判断に迷う所です。

■２■南西側の農道から撮影　画像クリックで拡大

　国土地理院の発行している２万５千分の１の地図では「桑畑の記号」が記されていることから元来は桑畑であったものと思われます。　養蚕が地場産業であったのは、少なくとも昭和初期以前の数十年以前のことであると考えられるので当寺の農地の改良事業とも考えられます。
　然し近現代の農地開墾にしては、ややその必然性に疑問を感じる大げさな造成のように思われます。

■３■東側の農道上で北側から撮影　画像クリックで拡大

　建物建設予定地の造成工事や工事関係の残土を置いたにしては、桑畑の跡が残っていることから些か可能性が薄いようにも思われます。　また、この狭い農道を大型建設機械や１０トン積載の大型ダンプカーが走行できるはずも無く．．．

■４■東側の農道上で南側から撮影　画像クリックで拡大

　「堀跡状の溝」の深さは畑側でおよそ２ｍ強、山林側で１ｍ弱というところですが．．余りに見事すぎていることや年代の古さを全く感じさせないような印象もあるので何とも判断しかねますが、少なくとも城館に関する遺構ではないことは間違いなさそうです。