河越氏館　河越館　中世城館　城跡　城址　埼玉　武蔵

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	河越氏館（河越館）
関連ページのリンク	200/01/22の日記　小室陣屋
所在地	埼玉県川越市上戸
歴史と沿革	■秩父平氏の流れを汲む河越氏の祖先は大蔵（嵐山町）、葛貫（毛呂山町）、と本拠地を移し、重頼の代になり河越に居を構えたという。（「続群書類従」）　なお、重頼の祖父重隆は久寿二年（1155年）大蔵の合戦で源先生義賢と共に源義平と戦い討死している。（「平家物語」巻12巻第3話） ■河越太郎重頼は源平の戦いで源頼朝に従い次第に勢力を拡大するが、源義経の義父であったことから文治元年（1185年）伊勢国の所領を剥奪され子の小太郎重房と共に頼朝に誅殺される。しかし、本領の河越荘は重頼の母に預けられたという。（「源平盛衰記」）　この処分について、河越荘は後白河法皇の領地であり新日吉神社に寄進されていたことも影響しているらしい。　なお、源義経は文治5年（1189年）衣川で討死を遂げ、義経31歳、妻は22歳でこの妻というのは重頼の娘であった。（「吾妻鏡」）平広常、比企氏、畠山氏、和田氏などと同様に有力御家人、有力豪族の台頭をを恐れた鎌倉方により半ば意図的に誅滅させられたのであろうか。 ■しかし、重頼父子の誅殺の20年後、元久二年（1205年）には同族の畠山重忠の討伐のため次郎重時、三郎重員が北条義時の軍勢に加わっている。その後鎌倉幕府の御家人としての地位を徐々に回復し承久の変（1221年）にも加わるなどして嘉禄2年河越重員は「武蔵国留守所総検校職」に任じられたことにより往時の繁栄を取り戻していく。　この職は秩父氏惣領の世襲であったが、京都の朝廷の意向に左右されない鎌倉幕府の裁量権を誇示する意味もあり復活したとのことであるが、その職務の実態については不明な部分が多いようである。しかし、実態はともかく父祖代々の職が復活したということは河越氏の当時における隆盛を示すと考えられている。 ■その後河越氏は、鎌倉幕府の滅亡の時は新田氏、足利氏と鞍替えし鎌倉公方足利基氏にも忠勤を励み勢力を維持していく。しかし、相模守護の解任などの処遇に対する不満から、正平23年（1368年）同族の高坂氏などと平一揆によって蜂起し鎌倉府に対して反乱を起こすが、足利氏満、上杉憲顕、上杉朝房らの鎌倉府方に敗れて勢力を削がれ歴史の表舞台から姿を消す。また、その一族の一部が伊勢国に流れて土着し、伊勢平氏となり後北条氏の祖となったという巷説もあるという。　なお、その後15世紀末山内上杉氏の上戸陣所として文献に現れ、後北条氏の時代には大道寺氏の知行とされ館は数次にわたって拡張されたという。「新編武蔵風土記稿」においても、常楽寺に大道氏の墓碑の存在を示すと共に大道氏の城跡であったという記述を残している。この点については川越市の発掘調査により裏付のあるものとなっており、発掘されたカワラケなどの遺物から後北条氏の時代には重要な支城として機能していたことが推定されている。。
確認できる遺構	土塁、空堀？
構造的特徴および周辺の地理的特徴	■入間川がすぐ東側を北流し、西には高麗川、小畔川を始めとする小河川が多く荒川の支流に挟まれ天然の要害を形成している。　また周辺は広々とした耕作地帯であり水田も多く水害に悩まされていたことは推察できるが、その反面肥沃な土地であったと思われ中世の武士の館の所在地にふさわしい立地条件となっている。　入間川対岸の南東1.2㎞に小室陣屋がある。
参考資料、古文書、記録	「中世北武蔵の城」（梅沢太久夫　著　2003/岩田書院刊) 「川越市史　中世編」（1985年/川越市編集発行）「埼玉県史　通史編２中世」（1988年/埼玉県編集発行）「埼玉県史　資料編中世4記録2」(1986年/埼玉県編集発行) 「河越氏と河越館　第１６回企画展図録」（2000年/川越市立博物館編集発行）「川越市研究①」（1984年/川越市編集・発行）「川越の人物誌第１集」（1983年/川越市教育委員会発行）
文化財指定	国史跡１９８４年１２月６日指定
訪城年月日	200/01/22

訪城の記録

（　2005/01/22　）
■川越城ではなく河越館の方
　有名な観光名所の川越城ではなく、国の史跡に指定されている中世初期から南北朝期にかけて活躍した入間川沿いの上戸に所在する河越氏の館の方です。館跡の南東には時宗常楽寺があり、目立つ遺構は西側の土塁と北側に一部残る土塁ぐらいです。あとはモグラが活発な活動をしているようで、あちこちに顔を出した跡がありますが一応整備された草原が広がっています。また現在北東部分で大掛かりな発掘調査が行われている最中です。
　文治元年（1185年）河越重頼は源義経の義父であることから源頼朝に誅され伊勢国の所領も没収されてしまいます．．．．いかん、ＮＨＫの大河ドラマの中に登場するかもしれない．．．．マイナーの路線から外れてしまうではないか(^^;　しかし、河越荘を中心にしてその後勢力を盛り返しますが応安元年（1368年）の武蔵平一揆の乱で鎌倉公方方に敗れ衰退していったということです。
　しかし国の史跡の指定を受けている割には、西側の土塁の隣がゴルフ練習場であったり、車がすれ違うたびに土塁が削られていったり．．．．大体自分の車を止めた場所自体が土塁跡の一部のような気が．．．．(^^;

■川越橋の三十六歌仙
　入間川に架かる川越橋の上からは一週間前よりも遥かに雪化粧の濃くなった秩父、奥多摩の山並みが一望できます。周辺には殆ど遮るものもなく、歩道のスペースなども十分にとってあるので冬の時期はそうした山並みを眺望するにはもってこいのポイントのようです。難点といえば遮るものがないので矢鱈に風が冷たいことと、大型車が通過するたびに一瞬地震かと勘違いするくらい微妙に橋梁自体が振動することでしょうか。
　この橋の袂の両側には三十六歌仙の歌碑のプレートが埋め込まれたりしていて、それなりの風情も感じることができます。
　真冬とはいえ穏やかな南側からの日差しに入間川の水面がきらきらと輝く様子がさらに一層その趣を増しているように見えたのですが。

Ｂｅｓｔ　Ｓｈｏｔ？

　経験的にといっても極々浅いものですが、土塁の撮影はどうやら逆光を少し利用するとやや質感、立体感が出るようです。
　手前が西側の土塁で、奥に重なって見えるのが北側の土塁です。
　(　2005/01/22　撮影　晴　)

交通アクセス

・東武東上線霞ヶ関駅より徒歩15分。MapFan Web の案内図です　

（　2005/01/22　撮影　）

■館跡のすぐ東側を北の方角に流れる入間川の下流。入間川はこのあと川越城を大きく迂回して荒川に合流する。
　周辺は水田地帯が広がっており、平安時代末期から中世初期の武士の館の所在地としては典型的な事例らしい。現在は広い河川敷を利用し10ヶ所以上の運動公園・グランドが設置されている。

■川越橋の上から秩父の山並みで、三角形の特徴のある山容は標高１２９５ｍの武甲山。
　手前のグランドは上戸（うわど）運動公園。河越氏館跡はこの写真のすぐ右手の西側に位置してます。

■説明不要の霊峰富士の山。川越市の北部のこの辺りから富士山の姿をはっきりと捉えられる日数は残念ながらそれほど多くはありません。
　秩父や奥武蔵の方面ならば冬場の晴天時であれば、殆ど眺望することができます。しかし、富士山は南の方角に当たるのために東京の多摩地区の大気の状態にかなり左右されるようです。
　この日は丹沢の大山方面もくっきりと眺望できましたが、このような日はオホーツク高気圧の活動が活発な晴天に限られるので、冬場でもせいぜい２０日間もありません。

■川越橋の袂の三十六歌仙の額。市内にある東照宮所有の「三十六歌仙額」（明治３９年４月１４日指定の国の有形文化財）に因んだモニュメント。大分以前に「行政の文化化」というキャッチフレーズが流行ったことがありますが。
　左から柿本人麻呂、凡河内躬恒、大伴家持となっています。（画像は大分ぼやけてますが、一応拡大します(^^;）

■先ほどの三十六歌仙のモニュメントはこのような形で大理石の腰壁に埋め込まれていました。

■北側の土塁で、延長約４０ｍ高さ1.5ｍ程度。南側より撮影。

■同じく北側の土塁を西側から撮影。マウンテンバイクやオフロード用のバイクで登ったような跡がくっきりと残されていました。
　残念なことですがやはり立ち入りを制限するようななんらかの手立てを講じないといけないのかもしれません。

■一方こちらは、西側の土塁で延長にして約200ｍはあります。高さも北側のものと比べて1.8ｍから2ｍ位のところもあり、丁度中央部分の窪みは小口のようにも見えたのですが。北側の先端部分から撮影。

■南西方向から見た西側の土塁で、かなり傾斜が緩くなってしまっています。

■同じく西側の土塁を南の方角から撮影したもの。

■前の写真とは反対に西側の土塁を道路沿いの南側から撮影。

■北側の土塁を東側から撮影。殆ど遺構を確認することのできなかった小室陣屋の次に訪城したこともあり、土塁や空堀の姿を見たとたんに興奮して撮影枚数が多くなり、似たような画像を合計31コマも撮影してしまった(^^;

■発掘現場近くの草原にある、国の史跡であることを表明しているかなり侘しげな物体(^^;　南東側のゴルフ練習場に近い所にも、もう少し状態のよい同型のものが設置されています。

■現在発掘中の現場。この右側の方でも発掘中です。常楽寺の北側に空堀跡があるらしいのですが、確か南北に伸びる通路の西側に幾分くぼんだ地形がありますので多分その辺りかと。写真にすると間違いなくただの原っぱになることは間違いないので撮影してません(^^;

■西側土塁の北半分の遠景。

■こちらはその南半分の様子で、ゴルフ練習場がすぐ隣にあり、景観の上でやや疑問を感じるのでありました。国の史跡とは名ばかりなどとは云いませんけど．．．．．(^^;

■館跡の南東部にある時宗常楽寺の道路沿いの山門で、左側に河越氏館跡の標柱が見えます。交通量が多く＜なかなか車の通行が途切れなかった．．．．

■内側の山門と常楽寺境内。境内にある掲示板には「埼玉新聞」の河越氏館に関する記事のコピーが掲示されていました。

■こちらの説明版も大分風雨に晒されて、読みづらくなっています。発掘も確かに大事ですが、これと並行して文化財に対する知識と理解を広く市民にアピールするための取り組みが必要なように思うのですが。

■常楽寺の東側にも土塁と思われるような高さにして数十センチ程度、延長50ｍ以上の連続した地面の盛り上がりがありました。


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