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撮影場所 東京都文京区 ( 2017年5月4日 撮影 晴れ ) 花と株

日本名 浜大根(ハマダイコン)
⇒海岸沿いの浜辺付近に生育するダイコンであることからこう呼ばれたようです。
科/属 アブラナ科ダイコン属
学名 Raphanus sativus L. var. hortensis Backer f. raphanistroides Makino (ラファヌス サティウス) ※「筑波実験植物園」HPを参照しました
また「Raphanus」 はギリシャ語の「raphanos(早く割れる)」に由来するとされ、その発芽の早いことから命名され、 種小名の 「sativus」 は同じく「栽培された」という意味であり、 変種名である「 raphanistroides については 「raphanistrum」(セイヨウダイコン)+oides(似た)」を合わせたものだそうです。
開花時期 普通は4月から6月頃とされていますが、温暖地域の早生の場合には節分過ぎ頃から開花する場合もあるようです。
特徴など 一般にダイコン類(属)は地中海沿岸、中央アジアを原産地とし、古い時代に中国を経て日本に伝来したものとされていますが、このハマダイコンは日本国内では浜辺周辺の砂礫地などで散見されるダイコンの一種で越年草とされています。
草丈は30センチメートルから70センチメートルほど、これに2センチメートルほどの花柄を伴う、花径約2センチメートル余りの白色から紫色ないし赤紫色の4枚からなる花被が茎先に向って徐々に開花していきますが、花色は同じ株でも微妙にその色合いが異なります。

■ハマダイコンの謎
学名の由来などとは別に、このハマダイコンについては幾つかの疑問があるように思われます。
(1)ハマダイコンのルーツ
 まずそのひとつが、ハマダイコンのルーツについてですが、一般には現在でも「栽培種のダイコンが逸出し野生化した」という巷説が流布しています。しかしその一方で、ダイコンの渡来について「古事記」(712年成立)に「おほね(オオネ、大根)」の記述があり、のちの「延喜式」(912成立)にも「中国から渡来したもの」という記述があることから、少なくとも1300年以上前に中国、朝鮮半島から渡来したものと思われ、これがハマダイコンのルーツであろうと推定し、「ハマダイコンの多くは栽培種が逸出野生化したものではなく、大陸(※中国、朝鮮半島など)から古い時代に渡来した野生ダイコンの後代(※子孫)であるという興味深い学説もあります。加えて、DNA解析による分子生物学的研究により、「ハマダイコンは栽培ダイコンから逸出したものではない」ということも明らかとなっているそうです。
※「恵泉女学園大学園芸研究所報告:園芸文化 第1号」の「恵泉 野菜の文化史(1) 藤田 智(園芸文化研究所)2004−6−15発行」(「恵泉女学園大学リポジトリ」より引用いたしました)

(2)食用となるのか
これについては、一般の図鑑類などの解説ではその多くで、「固い、辛い、不味い」などの点で食用としてはあまりすすめられない旨が述べられています。しかし、近年におけるネット社会の進展などによりクックパッドなどを始めとしてそのその調理法が示されいることも事実なので、美味しいかどうかは個人差もありますが、少なくとも有害であるというものではなさそうです。

(3)肥料を与えればダイコンのようになるのか
これは著名な植物学者である牧野富太郎氏の異説(※「増補改訂新版 山渓ハンディ図鑑1野に咲く花」(2013/山と渓谷社))とされていますが、その信憑性には検討の余地があるのかも知れません。

花言葉はその発芽時期の早さに由来したのか「ずっと待っています」があります。

※参考にした図鑑類 
(注)「×」印は「食用に向かない」との記載があるもの、「」印は栽培種のダイコンが野生化したとする記載のあるもので、実に様々な記述となっていました。この点について仮に多数決の原理を適用すれば、「ハマダイコンは栽培種のダイコンの野生化したものであり、おおむね食用には適さない」のかも知れないなどということになってしまうのですが如何なものでしょうか。

×N「日本帰化植物写真図鑑」(一部改訂版/2011/全国農村教育協会)
 「園芸植物」(1998/山と渓谷社)
×N「散歩で見かける野の花・野草」(2013/日本文芸社)
 「野草・雑草の事典530種」(2014/西東社)
 「身近な野草・雑草」(2010/主婦の友社)
 「花と葉で見わける野草」(2010/小学館)
 「日本の山野草」(1998/NHK出版)
×N「日本の野草 春」(2009/学研)
「花色でひける野草・雑草観察図鑑」(2005/成美堂出版)花の咲く前は食べられる旨と、ハマダイコンのDNA解析の記述がある
「季節の野草・山草図鑑」(2005/日本文芸社)食用可とDNA解析記述有
 N「日本の野草・雑草」(2008/成美堂出版)花の咲く前の食べられる
 「山野草ガイドブック」(2002/永岡書店)
×N「増補改訂新版 山渓ハンディ図鑑1野に咲く花」(2013/山と渓谷社)
 N「野草大百科」(1992/北隆館)※別名、方言、調理法などに詳しく、花の咲く前は食べられる旨を記載している
×N「野草見分けのポイント図鑑」(2003/講談社)
 「園芸植物大事典」(1994/小学館)

※参考にさせていただいたサイトなど
「植物園にようこそ!」
「筑波実験植物園/植物図鑑」※公式見解ではありませんが、「ダイコン野生化説」には懐疑的です
「四季の山野草」
「恵泉女学園大学リポジトリ」※上記「ハマダイコンのルーツ」参照
別名
俗名
方言
古名として「オホネ」(於保根、オオネ)などがあります。

観察の記録

( 2017/05/04 )
世間の常識
 連休の最中の5月4日みどりの日に、巣鴨で両親と姉の墓参りを行った後に、地下鉄で白山まで行き「小石川植物園」に立ち寄りました。この画像は同園内のの標本園で撮影したものでしたが、花色はほぼ白色に近いものから赤紫に近いものまで様々な変異が表れていました。この日はたまたま「みどりの日」でしたので幸いなことに入園無料でしたが、連休の最中ということもあり、家族連れ、高齢者の団体などで賑いを見せていました。植物画像の撮影はおもに「標本園」と「薬草園」を軸に40種ほどでしたが、逸出し自生している植物も少なくなく、この時期にはオオアマナ(オーニソガラム)、クサノオウ、サキゴケなどが標本園内を含めて所構わず繁殖中。このため本来の説明プレートがあまり役に立たない状況も垣間見られましたが、時々吹き渡る初夏の風は爽やかで新緑のいろはモミジの木陰はまことに居心地の良い空間でした。
 この5日後にも「筑波実験植物園」にも出かけたのですが、生憎と「海岸性砂礫地」のゾーンは整備中のためでしょうか、この「ハマダイコン」の姿を見かけることはできませんでした。
 なお今回はHPの作成にあたり、「ハマダイコン」のルーツ調べになどに時間をとられたために、都合約5時間近くを要してしまいました(^_^;) 加えて学術的な研究の成果と世間の常識との乖離を目の当たりにした気持ちになりました。


・2017/05/17 HP作成


ハマダイコン


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