( 2016/06/03 )
■60年ぶりの再会
獅子ケ谷の殿山付近の花壇のような場所で撮影したものですが、子どもの時分からどこか見覚えのある花姿でしたので、今回に限っては撮影から特定までの時間は割合と短く済みました。むろんこの間に何度かは目にしているはずですが、余り明確な記憶がなくむしろ60年ほど前に見た記憶の方が鮮明であったりします。
その当時は今ほど園芸植物も多くはなく、夏になると向日葵、百日草、ダリアそれにこのゼラニウムなどが当時の花壇の定番であったように記憶しております。むろん自宅のものなどではなく、近所のかかりつけのS内科医院の庭先に咲いていたものです。
なにぶんにも昭和30年代前半頃のことなので、世間ではようやく高度経済成長のスタートラインに辿りついたものの、チョコレート色の山手線に乗ればアコーディオンを抱えた傷痍軍人や米軍兵士(講和条約締結後も長らく進駐軍と呼ばれていた記憶もあります)と出会い、近くのお寺の裏庭には防空壕が残り、家庭ごみの取集は大八車が使用され、未だ上野駅の地下道の両側には今でいうホームレスの方がおいでになるという、未だ「戦後」が残っているような世の中でした。
ゼラニウムの赤い花は、自分にとってそうした60年前の風景を鮮やかによみがえらせる記憶の扉なのかも知れません。
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