( 2017/05/04 )
■右膝の傷跡
都内にある「小石川植物園」の標本園で撮影したものですが、この鋭い棘のある画像を整理していて思い出したことがありました。お陰様でいままでにカラタチの棘が刺さったというような恐ろしげな記憶はありませんが、昔は似たような人工物に「有刺鉄線」(通称バラ線とも、たぶん棘のように加工した部分がバラの棘のようなものであったこと、あるいは棘をまいた塊がバラの花のような形をしていたことなどによるものなのでしょうか)がありました。むろん現在のように洗練された形状の有刺鉄線とはほど遠い、武骨な細工の施された針金細工のようなものです。当時住んでいた都内の山手線沿線の住宅地や空き地には、よくこの「有刺鉄線」(地上部の長さ1.2メートルくらいの杉丸太の杭を敷地境界に沿って2m間隔くらいで地面に直接打ち込み、これに有刺鉄線を3段ないしは4段地面と水平方向に張り巡らせるもの)が外部からの侵入者を拒んでおりました。それはたぶん小さな空き地で草野球のようなことをして遊んでいた時のことだと思います。取り損ねたボールを探しに空き地近くの民家の庭先を探した際に、頭の方は無事通過したものの、足の方は見事にこの「有刺鉄線」(しかも少し錆びついていた)に阻まれました。その時には切り傷を負ったという自覚は殆どありませんでしたが、自宅に帰ると子どもとしてはかなりの深手に不覚にも落涙。その後は幸い破傷風などを併発することもなく、記憶では医者にもいかずに治癒していったようです。果たして肝心の大切なボールが見つかったのかどうかは全く記憶していません。その代わりに右膝の外側に、60年が経過したにもかかわらず今もくっきりと残る長さ5cmほどの傷跡がその経緯を物語っておりました。
なおこのカラタチの花を撮影した直後に、よっこらしょと腰を伸ばして何気なくふと振り返ると、東側の方角にはその白い花が雪が降り積もったようにも見える見事なヒトツバタゴの大木がこちらを見下ろしておりました。60年ほど前にも小学校の遠足で訪れた植物園でもあり様々な縁を感じさせてくれました。
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